paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work 64 屋根の塗装 コロニアルの塗装の是非

コロニアルの塗装 

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以前、屋根の塗装について書きました。 

ここでコロニアルやカラーベストなど、商品名を記載しましたが、分類的には「化粧スレート屋根材」といいます。スレート屋根の事を一般的には「コロニアル」と呼ぶ方が広まっていますので、ここではコロニアルと呼ぶ事にします。 

カラーベストはブランド名、コロニアルは商品名とケイミュー株式会社のスレート屋根材です。

 

paintwork.hatenablog.com

の記事内でコロニアル(スレート屋根)の塗装について、私は塗装の必要ありと書きました。 

 

はじめに

外壁でも同じ事なのですが、塗装の目的である、「美観と保護」という考えの元に、この記事では「スレート屋根」を題材にしていますが、古くなれば「やり替える」、「建て替える」などの考えであれば、身も蓋もない話で、ペンキ屋の私が口にするのもおかしな話ですが、近年の新築住宅状況では「塗装工事」などは必要ないと思っています。

スレート屋根材(コロニアルやカラーベスト)の塗装について、同業者やリフォーム業者にも、「塗装した方がいい派」と「塗装する必要は無い派」があるみたいなので、私的には面白い題材なので取り上げてみました。あくまでも、私の経験に基づく私的見解です。

メーカーの見解

まず、カラーベスト製造販売メーカー「ケイミュー」では、

「カラーベストは、表面の色が薄くなったり、汚れがついても、屋根材としての基本性能・防水性には問題ありません。経年による褪色が気になりはじめ、屋根としての美観の維持向上を図る場合は、再塗装(リペイント)を行ってください。」

引用元:屋根材|お問い合わせ・FAQ|屋根材・外壁材・雨といのケイミュー

 と、「よくあるお問い合わせ」のページに記載されています。

 また、同メーカーのHPに記載されているメンテナンススケジュールには、「30年」までのスケジュールがあり、「10」年ごとにメンテナンスを行うように記載されています。(塗装のメンテナンスではありません)

普通に解釈すると、30年間塗装しなくても基本性能に問題はないので塗装については、美観向上以外に必要がないと解釈できます。また、一つの目安として30年が寿命なのかな。とも受け取れます。

塗装業者やリフォーム業者の見解 

スレート屋根(コロニアルやカラーベスト)の塗装についてネットなどを見ると、「塗装した方がいい派」と「塗装する必要は無い派」があるみたいです。

それぞれの理由

では、「塗装した方がいい派」と「塗装する必要は無い派」の理由を、簡単にではありますが、ピックアップしてみます。

塗装した方がいい派の見解

・耐久性の向上

・劣化の防止(耐久性や防水性)

・美観の回復

塗装する必要は無い派の見解

・塗装しても寿命(耐久性や防水性が向上)が延びるわけではない

・塗装しなくても雨漏りなどはしない

・塗装することによって雨漏りする可能性

・30年経過すれば葺き替えすればいい

・スレート屋根材の寿命を延ばせたとしても、その下の、ルーフィングや野地板の方が悪くなる。

 と、上で述べた以外にもありますが、要約するとこんな感じです。

ではどうするのか?

塗装した方がいい派の見解

新築から10年前後毎で塗装して、寿命を延ばす。

塗装する必要は無い派の見解

定期的にメンテナンスは行うが、基本的には塗装はせず、寿命である30年前後を目処に葺き替え。

と、いう見解です。

まずは断面から

私が書いた図ですので解りにくいかもしれませんが、どうして両極端な意見になってしまうのか、スレート屋根の断面を見てみるとわかるかもしれません。この図では、棟板が棟板金の中に入っていますが、換気を考慮した棟板金では棟板が入っていないものもあります。f:id:Paintwork:20180514011053j:plain

 

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野地板(のじいた)

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まず、「野地板」と呼ばれる、屋根材を乗せるための「床」が張られます。 この野地板には色々な種類がありますが、一般的に使用されているのは、厚さ12mmの「構造用合板」です。その他、「耐火野地板」などもあるようです 。この板にルーフィングと呼ばれる防水シートを敷き詰めて、コロニアル(屋根材)を固定するために釘で打ち付けます。厚みが12mmなので当然固定するための釘は板を突き抜けてしまいます。

ルーフィング

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次に、「ルーフィング」と呼ばれる防水シートを「野地板」の上に敷き詰めます。雨漏りなどの「最後の砦」となる重要な材料です。通常は「ルーフィングシート(防水シート)」と呼ばれるもので、スレート屋根材が1次防水、防水シートが2次防水となります。製品を製造しているメーカーの商品でも数多くのシートが販売されているのですが、大まかに分けて、

アスファルトルーフィング(アスファルトを使用)

・改質アスファルトルーフィング(アスファルトを使用)

・高分子系ルーフィング(アスファルトを使用していない)

という3種類の「ルーフィング材」があるそうです。

なのですが、新築などで建てられる一般的な家では、「アスファルトルーフィング940」という、比較的、廉価な商品が採用されていることが多いみたいです。

参考元:田島ルーフィング株式会社 

また、同社製品の耐久比較では、アスファルトルーフィング940では、約10年で大幅に防水性能が低下しています。一方で、高級な「マスタールーフィング」は、性能が段違いにいいみたいです。塗装工事でも下地が大事なのですが、どの部位をとっても下地が大事なのですね。ですが、防水シートなどは家を建てる時には見落としがちだと思います、予算の都合もありますし。f:id:Paintwork:20180514002908p:plain

画像元:田島ルーフィング株式会社

また、コロニアルを張り付けるために、「」を使用します。釘が「ルーフィング」、「野地板」を突き抜けていますが、このルーフィングの素材である、「アスファルト成分(アスファルトルーフィングの場合)」が、太陽の熱で融解して 釘に絡みついて防水効果が維持されるそうです。ですが、劣化してくるとシートが硬くなってくるので、破れやすくなったりしてその後は防水性能が加速度的に低下していくそうです。

釘 

コロニアルを固定するために「釘」を使用するのですが、釘(画像ではビス)が「野地板」を突き抜けていますね。また、「棟板」 を固定するのにも「釘」が突き抜けています。「棟板金」など、板金部を固定するための「」は、浮いてしまいやすいので、釘が浮いてしまうと雨漏りの原因につながります。板金部の「」は年数が経つと浮いてきてしまいます。経年で釘が錆びたりすると、釘穴などが大きくなったりしますので、そこから雨水などの流入なども考えられます。f:id:Paintwork:20190203174140j:plain

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コロニアル

私の書いた図では、少し大げさですが、コロニアルの「重なり部」には「隙間」が少し開いています。これは、「繋ぎ目」などから中に入った雨水などが排出される為と、通気性を良くするためです。何らかの理由で隙間が埋まってしまうと、中に流入した雨水や、裏側からの結露などの水分が排出されない為に雨漏りの原因になります。f:id:Paintwork:20180503150611j:plain

塗装した方がいい派」は、この「隙間」が塗り替えなどを行うと「塗料で 」埋まってしまうので、塗り替えを行った際には「縁切り作業」や「タスペーサー挿入」などを行わない業者は良くない業者と、かなり前面に押し出したアピールをしています。

塗装する必要は無い派」も同じ理由から、塗装は必要ないとの見解みたいですし、仮に塗装した場合は、「縁切り作業は必須」と、同意見みたいです。

縁切り作業とは 

コロニアルを塗装した場合は屋根材(スレート)の重なり部に、塗料が入り込み「隙間が塗料で塞がり」雨水などの水分が逃げ道を失うため、塗装後に「ヘラ」などを差し込み「隙間を確保」するための作業です。近年では、「タスペーサー」という部材を差し込む事で、縁切り作業を行わなくても隙間を確保できる工法もあります。

私の見解 

ここからは上の「塗装した方がいい派」と「塗装する必要は無い派」の、見解を考慮しながら、私の見解を述べたいと思います。

まず、コロニアル瓦の場合、地域の環境にかなり左右される部材だと感じます。

私の住んでいる九州地域では「梅雨」や「台風」の影響がかなりあります。

冬には数回ですが、「雪」も積もりますし、夏は連日、気温が「30度」を超えます。屋根は家の部位の中でも天候や環境の影響を受けやすい場所なので、一年を通して「屋根材にかかる負担」はかなりあります。 

耐久性の向上について 

耐久性の向上については、製造メーカーが、「表面の色が薄くなったり、汚れがついても、屋根材としての基本性能・防水性には問題ありません」と、はっきり公言しているために、「塗装する必要は無い派」 は、塗装しても耐久性に関しては意味はない。と、しています。

コロニアル材の断面図です。

画像元:ケイミュー株式会社

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同色の無機化粧層、無機彩石の上に高耐候アクリルコートを採用。トップコートが仮に劣化してもその下の無機2層構造が色感をキープし続けます。

参考元:ケイミュー株式会社 

基材の上の層には無機層がありますので、基本的には、「劣化しにくい」と思います。

ですが、

参考元:ケイミュー株式会社 維持管理のページ

では、

次の様な場合は、弊社では責任を負いかねますのでご了承ください。

●天変地異・地盤周辺環境・公害等による割れ・クラック等の損傷、及び通常の経年変化による金属サビ・コケ・カビ・藻等の汚れ・変色等が発生した場合。

とも記載されています。

つまり、「色が薄くなったり、汚れがついても問題ないけど、錆びとかコケとか藻とか発生での不具合は責任持てません」という事です。

では、こんな風になってしまったら、問題があるのではないでしょうか。f:id:Paintwork:20150326064134j:plain

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下の画像では、「藻」がちょっとあるだけですが、月日が経てばコケも沢山発生する可能性もありますし、藻も増えていきます。f:id:Paintwork:20180516062536j:plain

あくまでも、私の経験によるものですが、スレート屋根はコケや藻が発生しやすく、増殖しやすいと感じます。塗り替えなどで水洗いを行うときに、コケや藻がまったく発生していない家はほとんど無いです。(これに関しては地域差もあるかもしれませんが。)

コケや藻などは雨水の排水を妨げる事は間違いないですし、常に湿気のある状態になりますから、スレート屋根やその下の下地などにも影響があるはずです。コケや藻が発生した場合は高圧洗浄で洗い流すだけで問題は解決し、塗装は必要ないという意見もあります。

このコケや藻を綺麗に落とすためには、「高圧洗浄」で洗い流すのが一般的ですが、コケや藻などは根深く食い込んでいて、新品ではないコロニアルなどの場合は 、ほとんどが、コロニアルの塗装層まで剥がれてしまいます。これは、「表面の色が薄くなったり、汚れたり」とは全く違う状態です。

コケや藻などを放置すれば問題が起きる可能性があり、洗い流せば塗装層が剥がれて基材が出てくる。」と、「あちらを立てればこちらが立たず」状態です。

私の考えでは、耐久性の向上というよりは、劣化が進んだ状態や、コケや藻などが発生した場合など、基材が出てきた状態を塗装して回復や劣化の進行速度を遅くするという意味合いから塗装した方がいいと思っています。もちろん、劣化の無い状態では塗装をする必要はありません。

雨漏りについて

次に雨漏りについてですが、「塗装した方がいい派」の見解では、

・防水効果を上げる為に塗装する

という見解がありますが、これについては、何をもって「防水効果」とするかの基準によって、意味合いが変わります。

本来、コロニアルは水を通さない素材です。でなければ、屋根材となりえません。メーカーも色の褪色や汚れでは、防水性は変わらないと公言しています。

私の見解では上で述べたように、通常の劣化ならば塗装しても防水効果は変わらないと思いますし、基材などが出てきた劣化ならば、「本来の防水効果も含めた回復」になると思います。

塗装する必要は無い派」の見解は、

・塗装しなくても雨漏りなどはしない

・塗装することによって雨漏りする可能性

との見解です。

もちろん、塗装をしなくても雨漏りしていない家は沢山ありますので、ごもっともなのですが、上で書いたような、「表面の色が薄くなったり、汚れたり」ではない劣化状態ならば、塗装をすることによって予防出来ます。ですが、雨漏りがおきてからでは塗装しても改善することは出来ません。

次に、「塗装することによって雨漏りする可能性 ですが、これについては、「作業者の知識と技量の問題」としか言えません。私はこれまで、数多くの屋根(スレート屋根も含む)を塗装してきましたが、「塗装したことによって雨漏り」をした事は、一度もありません。なので、適切な作業を行えば、塗装をする事によって雨漏りをする事はありません。

葺き替え 

塗装する必要は無い派」の見解は、塗装しない考えなので、

・30年経過すれば葺き替えすればいい。

・コロニアルの寿命を延ばせたとしても、その下の、ルーフィングや野地板の方が悪くなる。

この2つに関しては、「正論でもあり、ちょっと極論かな」と思う所があります。雨漏りの項で書いた通り、「塗装をしなくても雨漏りしていない家」は沢山ありますので、雨漏りしていないならば、ルーフィングや野地板もまだ使える状態ですし、雨漏りしてからでは、下地からやり替えしなければならないです。

「ルーフィングや野地板の方が悪くなる」のは、コロニアルにコケや藻などが発生しても、何も対処しない場合は上で書いた通り、水分や湿気、結露などのトラブルが起きやすく、野地板なども腐ってしまいかねないですが、トラブルのない通常の家では、「換気」というシステムがあるので、「屋根裏がジメジメしてカビが沢山発生している」事は殆どありません。

つまり、何も対処しないからこそ、ルーフィングや野地板が傷む事の方が多いです。下の画像はセメント瓦の屋根ですが、築40年以上経っている屋根です。ルーフィングや野地板が腐っていて、雨漏りし、下地ごと屋根が落ちてしまっています。

この瓦は「過去に何回も素人の方が水性の塗料を塗っています」。つまり、塗料や施工の知識のない方が耐久性のない水性塗料を何回も塗装して、水はけが悪くなり、再塗装するにも水性塗料の上には溶剤塗料は塗れないので、次の塗装も水性塗料しか塗れません。むしろ「悪い方向」の連鎖にしかなりません。(今回はコロニアル屋根の記事なのでセメント瓦の事はあまり書きませんが、セメント瓦でも正しい施工をしていればこの様な事にはならなかったと思います。)

室内の天井も駄目になっていました。外から除くと家の中が見えてしまってました。現在は葺き替えしてコロニアル屋根になっています。f:id:Paintwork:20180518060833j:plain

塗装しなくても、雨漏りなど問題が起きなければOKですが、トラブルの元になるような劣化状態があれば、塗装して現状回復という所でしょうか。

塗装だけでは、いつまでも家の状態を保持することは、私も不可能だと思いますので、最終的には(物の寿命)、カバー工法か、葺き替えになると思います。

最近のカバー工法の一部です。

ガルバリウム鋼板で出来たコロニアルみたいな屋根です。内側には断熱材も入っていますし、雨音もしないそうです。

カバー工法の弱点として、1階屋根などの場合、「壁との取り合い」があります。新築時などでは壁沿いの「水切り鉄板」は「壁の中」に立ち上がりが入り込んでいますが、カバー工法の場合は壁を切って中に差し込む事はあまりしません。(モルタル外壁の場合は壁を切って補修する場合もあります。)

ですので、内部に雨押さえ板金を取り付けていますが、コーキングで蓋をする形になりますので、コーキングの不備や劣化した場合は雨水などが入ってしまいます。f:id:Paintwork:20180518044947j:plain

美観の回復 

これについては、機能面に問題のない劣化の場合は、美観の回復だけと思われがちですが、劣化というのは経年とともに進行します。劣化具合よっては美観の回復のみですが、将来を見越した予防とも考える事が出来ます。

美観だけに関しては、「人それぞれ」ですので、外壁や屋根が汚れても、気にしない方は塗装は行わないでしょう。

それから工事面での都合や予算なども関わってきます。私の経験上、屋根だけの塗装工事はとても少ないです。屋根だけの塗装の場合は、「その数年前に外壁を塗装していて、その時に屋根の塗装は行わなかった。」場合がほとんどです。

塗装をしなくていい「瓦」などは別ですが、外壁を塗装工事する際に、コロニアル瓦が汚れていたり、コケや藻などが発生している場合は 、後に塗装するならば、一緒に塗装した方が足場代なども削減できますし、外壁などの他の工事を行うので、予算の交渉なども行いやすいです。

塗装工事を行う場合は、外壁だけや他の部分だけの塗装など、一部だけを塗装すると、塗装していない場所がより一層汚れて見えてしまいます。ですので、美観の問題は意外と大事で 最初は外壁だけの工事だったのが、工事途中に、あれやこれやと、気になる部分が「追加」になっていき、最終的には「家全体」を塗装する事も意外と多いです。

例えば、下の画像ですが外壁を塗装して、コロニアル屋根を「塗装しなかった場合」に どう思われるでしょうか?。コロニアル屋根にはコケが広範囲に発生しています。(画像では見えない裏側なども。)機能面では雨漏りなどもありませんので、塗装する必要は無い派」からみれば、塗装しなくてもいいでしょう。f:id:Paintwork:20180518064332j:plain

外壁を塗装して、屋根を塗装しなかった場合は、「もの凄く屋根が汚れて見えてしまいます。」外壁を塗装する意思があるので「綺麗にしたい」と思っているはずです。「綺麗にしたい」と思っているのに屋根が汚いと 、「屋根も綺麗にしたい、その他家全体を綺麗にしたい。」と思うとおもいます。

そのような面もあり、塗装における「美観の回復」は、保護と共に大事な事でもあると思います。

このお宅は5年~6年くらい前に 私が一人で塗装工事を行いました。塗装する前は、家全体的にコケなどの発生が多かったのですが、塗装後5年~6年経過していますが、コケなども発生していませんし、もちろん雨漏りもありません。(画像はあえて曇りの天気の時に撮影しています。)

「現在の状況です」f:id:Paintwork:20180518070202j:plain

 

「塗装前」です。 f:id:Paintwork:20180518070330p:plain

 

「現在の状況」です。 

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縁切り作業について

縁切り作業については、「塗装した方がいい派」と「塗装する必要は無い派」ともに、

必須」としています。 ネットなどでは、 殆どの業者が、コロニアルの塗装を行った際には、「縁切り作業」や「タスペーサー挿入」などを行わないと、「塗料が重なり部を塞いでしまい、雨漏りする」としていますし、縁切り作業を行わない業者はよくない業者などと書き立てている記事もあります。

タスペーサーは2005年頃に発売されました。このころから「猫も杓子も」縁切り、縁切りと聞くようになった気がします。縁切り作業はずっと以前からありますし、行うべき時は行っていました。

確かにタスペーサーという部材は縁切り作業を行わなくても、確実に隙間を確保できる部材です。タスペーサー挿入後、月日が経つとコロニアルが劣化していった場合に、人が屋根の上に乗ると割れるなどの意見も聞いたことがありますので、とても便利な反面、注意も必要という事でしょうか。

2005年頃に発売ですので、今年で発売されてから13年です。そろそろタスペーサーが発売初期の頃に使用された屋根がどうなのか、真実がわかる頃合いになってきました。f:id:Paintwork:20150308230921j:plain

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参考元:株式会社セイム

www.e-same.biz

縁切り作業やタスペーサー挿入は必須」という意見については、私の見解は「そんなことはない」です。私の場合は、今まで沢山のコロニアル屋根を塗装してきて、縁切り作業を行わなくても、雨漏りをしたことは過去に一度もありません。むしろ雨漏りするような事がつづけば廃業してしまいます。

もちろん、縁切り作業が必要な場合もあります。ですので、ネットなどの情報を鵜呑みにしたお客様が、「縁切り作業を行わなくてもいいの?、タスペーサーは?」などと、聞いてくるので、その都度説明しなくてはならないため、むしろ迷惑しているくらいです。

コロニアル屋根を初めて塗装しようと考える場合は、大体、新築から10年前後経過してからです。その頃にはコロニアルも少し反りや痩せがでて、新築時よりも重なり部の隙間が空いていることが殆どです。

元々、コロニアルなどは平面のツルツルではなく、何らかの柄や模様(凸凹)があります。ですので、重なり部がピッタリくっついているわけではありません。水はけや通気などを良くするためだと思います。(もちろんデザイン面でも) 

③ 

私は、基本的には瓦を塗装する場合は、溶剤塗料 しか使用しません。水性塗料を使用する場合は、既に水性塗料を塗っている場合か、溶剤塗料を塗ると問題が起きる場合のみです。弱溶剤塗料が出るまでは、屋根用塗料は、水性塗料か強溶剤塗料しかありませんでした。(トタン屋根などの金属製屋根は除きます

溶剤塗料は①と②の理由の隙間を埋めるほどの「膜厚」はつきません。 むしろ、塗料で埋めたくても埋まるものではないです。反面、水性塗料は隠ぺい力が高く、「膜厚が厚膜になりやすい」です。

塗料の垂れなどがあると、そのまま硬化してしまい隙間が埋まってしまいます。水性塗料で塗装した場合は、少しの隙間だと塞がってしまう可能性がある事と、溶剤塗料に比べて耐久性に劣ると思っているので、私は、基本的には使用しません。

下の画像は別の業者が水性塗料でコロニアルを塗装し、塗料をつけすぎて「塗料のたれ」が発生しています。塗料の付け過ぎにより縦の隙間も埋まっています。水性塗料ではこのような事が起きやすいので私は水性塗料は使用しません。ですが、縁切り作業が必要な「重なり部」はこのような状況でも塞がってはいません

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塗料の厚みは μ(ミクロン)という単位で表します。

1ミクロンは「1000分の1ミリ」です。

下塗りが約30ミクロンから50ミクロン、上塗りが1回50ミクロン×2回で、沢山厚みを付けても150~200ミクロンくらいです。

150ミクロンの塗装で「0.15ミリ」の厚みです。

ですので、溶剤塗料で塗装して①+②の隙間を埋めるのは至難の業なので、隙間を埋めれる人は凄いと思います、尊敬です。

縁切り作業が必要な事例

もちろん縁切り作業が必要な場合もあります。それは、「2回目以降の塗り替え」などで、すでに塗料の厚みがついていたり、水性塗料で塗装を行う場合などです。

私は屋根材の塗料には、同じグレードの塗料では溶剤塗料の方が優れていると思っていますので、なぜ水性塗料を最初から塗るのかまったく理解できないのですが、(この辺は環境や地域の差などがあるのかもしれないですが。)すでに水性塗料を塗っていて、その上に塗装などの場合は水性塗料しか塗れないので、縁切り作業、もしくはタスペーサー挿入などを行います。(水性塗料の上に溶剤塗料を塗る工法もありますが、一般的ではないため。)

縁切り作業を行わなくてはならない場合は、作業を行うタイミングがあります。 塗りながら、もしくは塗装後すぐでは、塗料が乾燥していないので、再度コロニアル同士が引っ付いてしまいます。また、完全に乾燥後だと、コロニアル材が割れてしまう事もあります。ですので、半硬化くらいで行うのですが、そうすると、作業者の「足跡」が付いてしまいます。 この足跡が付くのが私は嫌なのです。嫌なのでタスペーサーを使用しますですのでタスペーサーという商品を否定しているわけではなく、「縁切り作業」についての私的見解になります。

最後のまとめ 

ここまで長々と書いてきましたが、結局どうなのか、私見での最後のまとめをしたいと思います。

メタル役物

コロニアル材だけではなく、屋根を構成する部品として、「メタル役物」という「板金部品」があります。これはいわゆる「トタン」と同じなので、コロニアル材とは別に考えなくてはいけません。板金部なので錆などが発生します。固定するための釘などもありますので、コロニアル材を塗装しない場合でも、釘が浮いてくれば打ち戻しをしたり、塗装が必要になります 。

コロニアルの塗装は必ずしも必要ではないが、環境や劣化状態により、塗装を行った方がいい場合もある。

塗装を行う事によって雨漏りする場合は、「作業者の知識と技量の問題」 である。

美観の回復は以降の劣化予防にも繋がる。

縁切り作業は必ずしも必要ではない。

です。

私的感想

製造元メーカーのメンテナンススケジュールには30年までの、スケジュールがあるので、保証などはともかく、目安として30年がコロニアルの寿命だと思います。ですが、立地条件や地域環境など、様々な条件下では一律の劣化速度ではありません。

「塗装をして寿命を延ばす」ではなく、

「寿命を全うさせる為に塗装する」

と、いう方が 私的にはしっくりくる感じです。

「寿命がくれば葺き替えを行えば塗装などは必要ない」と、いう考えであれば、そもそも「外壁やその他の部分」、もしくは、「家全体」を 塗り替えやリフォームなど行う必要はなく、「建て替えれば」いいだけの話です。塗装屋もリフォーム業者も必要ありません。

そのような事が簡単には出来ないので、この様な話や、塗装屋や、リフォーム業者などがあるわけですし。家を所有するって本当に大変な事ですね。 

コロニアルメーカーさんのHPを勝手に沢山引用させて頂いたので、最後にお礼の意味を込めてコロニアル材について述べたいと思います。

屋根の全体面積で計算すると結構な金額になりますが、 何十年も耐久性のある屋根材で、メーカーの中でも最高級品の商品が、メーカー希望小売価格が、「1枚680円(税抜)」です。これは凄いと思います。とても素晴らしいコストパフォーマンスだと思います。

参考元:ケイミュー株式会社

www.kmew.co.jp

 また、この記事と対になる記事も書きました。

paintwork.hatenablog.com

今回はこの辺で。