paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work89 団地の鉄扉と防水床の手抜き塗装

前置き

今回は「団地造りの建物」の鉄扉と防水床の塗装を「手抜き工事」で行います。

記事タイトルには「団地」と書いていますが、正確には公営団地などではなく、団地とよく似たスタイルの建物です。塗装を行う許可はとっていますので、問題はありません。

時には求められる手抜き工事

手抜き工事というと、当然いいイメージではないですよね、悪いイメージです。予算は十分あるのに手抜きを行いボロ儲けするイメージです。

丁寧な仕事をする人や、腕に自信のある人などは、「自分はそんな仕事はしない。」と、思うはずです。

ところが、要点を押さえた手抜きなら費用を抑える事が出来、そのような仕事の需要も存在します。

仕事(商売)として行う以上は、予算や需要に合わせた仕事内容が重要で、限られた予算や期間内でベストを尽くす方が色々な意味で難しいと感じています。

私の場合は、予算や内容、出来上がりなどを検討してお客様が納得できるものであれば、躊躇せずに手抜きでもなんでも行います。

もちろん、十分な予算があるのに手抜きするのはアウトです。

内容

今回は鉄扉と洗面所の床を塗ります。それぞれ本来のやり方と要点を押さえた手抜き内容を以降で書いていきますが、ここでは今回の要点を簡単に書きます。

要点とは、

○鉄扉では、塗った塗料が直ぐには剥げない事、直ぐに錆が再発しない事。

○床では、塗った塗料が直ぐには剥げない事、防水塗料である事。

○鉄扉、床塗り作業は合わせて当日で完了(一人で一日)

です。

鉄扉

ケレン作業

下準備として、ケレン作業という錆落とし・ヤスリ掛けなどの下準備を行いますが、この作業をどの程度行うかで「手間賃」がかなり変わります。

本来は錆を綺麗に落としたり、以前の塗料の不具合(垂れ、ムラ)なども綺麗にするのですが、今回は錆をある程度落としてから以前の塗料の不具合(垂れ、ムラ)などは直さずに、全体的に紙ヤスリで擦って足付け(塗料の密着をよくする作業)を行う程度にします。

したがって、上塗りを行っても 以前の塗料の不具合(垂れ、ムラ)などはそのまま出てしまいます。

錆止め塗り

本来は全てを下塗りとして錆止め塗料を塗りますが、今回は錆の発生した部分だけを、「錆転換塗料」で塗り、錆の発生を抑え(遅く)ます。

部分的に塗る事を「タッチアップ」と言います。

上塗り

本来はウレタン塗料などのグレードの塗料を2回塗りしますが、1回塗りで終わります。その代わりにウレタン塗料などよりも上のグレードのシリコン塗料を塗ります。

解説

ケレン作業を簡略化する事で手間費を抑え、下塗りも部分的なタッチアップを行う事で材料費、手間費を抑えます。上塗りは1回塗りとする代わりにグレードの高いシリコン塗料を使用します。

鉄扉塗装前

よくある普通の鉄扉です。過去に何回も塗っているようですが、錆の発生や過去の塗り方があまりよくなく、塗料の塗りムラや垂れなどがあります。

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錆転換塗料タッチアップ

普通のエポキシ系の錆止め塗料よりも価格の高い錆転換塗料でタッチアップしました。

ぶっちゃけてしまえば、全部を塗ってもいいのですが、塗る時間や乾燥時間などを考慮すると、時間的に足がでてしまうのでタッチアップで行います。

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完了

シリコン塗料を1回塗って完了です。もちろん、枠や表側も塗っています。現状の色は白ボケた色なのでお客様が嫌だという事で画像の色になりました。

塗料の価格も色によって同じ種類の物でも価格が違いますが、ブルー系は白系などと比べると塗料の価格は高いです。

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洗面所床

続いては鉄扉と平行作業で行った洗面所の床になります。

画像右手側がお風呂場、左手がトイレになり、水回りが集中しています。

画像上の中央より右側に少しコンクリートブロックが見えていますが、洗濯機がブロックの上に載っています。

本来なら洗濯機を移動してブロックの下も塗るのですが、今回は洗濯機を移動せずにブロックの下は塗りません。

トイレとの床も続きになっていますので、画像の床と合わせてトイレの床も塗ります。

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使用材料

床の場合は、本来の塗料とは違い、「床専用」の塗料があります。防水機能を備えた床塗料は一般の塗料よりも高額です。理由はといいますと、軽歩行の際の摩擦などにも耐性があるからと、防水性があるからです。一般の塗料を人が歩く場所に塗ると塗料が剥げやすいです。

ここで本当の手抜きの場合は、ちゃっちゃと一般の塗料を塗って終わりなのですが、(塗ってしまえば見た目は同じなので素人がみてもわかりません)今回は防水塗装で用いられる、シート防水用の水性上塗りを使用します。

シート防水とはビルなどの屋上の防水などでよく用いられる防水工法で、防水ゴムシートを床面に張り付けて防水の土台とし、その上に防水用の上塗り塗料を塗る工法です。

上塗りに用いる塗料は何種類もあるのですが、その中でもコストの安い物がありまして、「水性の防水上塗り材」を使用します。単価でいえば一般のウレタン系上塗りよりも安いのに、防水上塗りとして使用出来るものです。

骨材

今回使用する上塗り材は「骨材入り」と「骨材無し」の2種類の物があります。骨材入りの物は、塗料に小さな骨材(砂みたいな)が入っていて、塗るとザラザラして、「ノンスリップ効果」があります。

水で濡れたりする場所だけど、人が歩いたりする場所の場合は「ノンスリップ効果」のある塗料を塗ったりします、プールサイドとか。後は、病院など高齢者が多い場所などの床での転倒防止とか。

一方、床専用塗料の方は防水性や摩擦耐性は高いのですが、塗ってしまうとツルツルピカピカする物が多く、水などで濡れると滑ってしまいます。(滑らない物もあります)

ここに住まわれている方は70歳前後の高齢者の方で、水回りが集中している場所の床という事もあり、転倒のリスクをなるべく避けるためにノンスリップ効果のある「骨材入り」の上塗りを使用します。

床の現状

塗装前の現状としては、過去に何回も塗料を塗り重ねていて、塗料の剥げた部分などもありますし、あまり綺麗な塗り方も行われていません。 

今回は、塗料の浮きや剥げた部分を「パテ」で軽く埋めてから床材を塗ります。

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パテ埋め

塗料の浮いた部分を剥いでから、パテで埋めました。

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シーラー塗り

シーラーとは上塗りとの密着性を高めるための材料で、ある意味肝となる作業です。

シーラーを省いてしまうと上塗りが剥げやすくなってしまいます。

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上塗り

最初から骨材が塗料に混入されている物です。

ノンスリップ材(骨材)は後から混入したりするものや、塗料を塗ってから骨材を「蒔く」タイプの物もあります。

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カラーバリエーション

この手の塗料は色のバリエーションが少ないです。

この塗料も骨材入りは5色のカタログ基本色しかありません。この塗料は「遮熱タイプ」もありますが、遮熱タイプは3色しかありません。

今回は「グレー」色を塗りました。

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アップ

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床完了

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最後に

どんな仕事にも言える事だと思いますが、プロが行う以上は時間(手間暇)をかければ綺麗な仕上がりになると思います。

今回は鉄扉や床などの塗装でしたが、私が行っている仕事では全てにおいて、仕上がりが「それなり」だとしても、要点を押さえていれば「それでOK」な仕事もあります。

限られた予算や期間(時間)のなかで仕事を行っていくのは、楽しくもあり、難しくもありますね。

 

今回はこの辺で。