paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work90 意匠性塗材や装飾仕上塗材などの塗り壁材

前置き

今回は、店舗(飲食店)の塗装工事を例に挙げて塗り壁材の「意匠性塗材や装飾仕上塗材」について書いてみたいと思います。

私には「コテ師匠」という師匠がいまして、塗り壁材の師匠がいます。と、同時に「パテ師匠」や「刷毛師匠」、「吹き付け師匠」、「家具師匠」などもいてお師匠様だらけです。

今回は私の請負仕事ではなく、コテ師匠の仕事で「私はお手伝い」という形で現場に入っています。

店舗の塗装工事については一応「建築塗装」の分野ではありますが、主に「内装の塗装工事」なので店舗工事独特の工事内容や仕上げ、段取りなどから、一般の「住宅外壁の塗装」などを主に行っている塗装業者ではノウハウや仕上げ方、段取りなどがわからずに「出来ない塗装屋」が多い分野でもあります。

また、壁や天井などの内装の塗装工事以外にも、カウンターや木枠、棚や装飾品などの塗装も行うため、「木工塗装」の分野にも理解が必要になります。

私や私の周りの塗装屋はどちらも行う事が出来ますが、壁や天井は現場作業、カウンターや木枠などの塗装は家具工場などの工場作業になるので、別々の塗装屋が行う事も多いです。

今回は主に「内装の壁や天井の塗装」の記事になります。

内装の壁や天井は殆ど石膏ボード

現在では店舗などに限らず、一般の住宅やその他内装に使用されている「壁や天井」は殆どが、「石膏ボード」というボードで造られています。

石膏ボードについてはwiki参照お願いします。

出典:石膏ボード - Wikipedia

また、厨房などの天井や壁などは種類が違いますが、やはりボードで造られています。

このボードの上に塗装を行うか、クロス(壁紙)を貼るか、塗り壁材を塗るかによって仕上がりの見た目は変わりますが、元になる素材はボードという事になります。

塗装だと刷毛塗りやローラー塗り、吹付でテクスチャー付けなどの仕上げ方がありますし、クロス(壁紙)にも様々な種類やテクスチャーの物があります。塗り壁材にも漆喰や聚楽(じゅらく)、珪藻土や「意匠性塗材装飾仕上塗材」など様々な仕上げ方があります。

 

新築中の家の天井に石膏ボードが張られています、壁はまだ張られていませんが石膏ボードで張られます。一般の住宅なのでこの後の仕上げはクロス(壁紙)になります。

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石膏ボードは「固めた石膏をで挟んで」ボードにしています。 そのためカッターナイフで切る事が出来、ノコギリなどが必要無く作業性がいいです。ただし、表面の紙が破れると石膏がボロボロとなってしまいますし、紙なのでそのままの状態では水分にも弱いです、結露などで紙が腐ったり、湿気の多い所ではカビなども紙に発生します。

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パテ

石膏ボードにはいくつかのサイズがありますが、一般的に多用されるのはサブロクと呼ばれる「3×6 (910mm × 1820mm)」サイズの石膏ボードです。このサイズのボードを下地(木下地や鋼製下地)に張っていきます。

したがって、ボードとボードの合わせ目(目地・つなぎ目・ジョイント)が出来ますが、その合わせ目に「パテ埋め」を行い、合わせ目を隠す作業が必要になります。

また、石膏ボードを下地に張るために「ビス」などを使用しますが、そのまま塗装するとビスで止めた跡がわかるのでビスの跡もパテで埋める(隠す)必要があります。

基本的なパテの目的は「凹みを埋める」という単純な物なのですが、用途別に様々な種類のパテがあります。

 

画像の物は蓋を開ければ直ぐに使用できるタイプのパテです。

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こちらは粉末状のパテで、水を加えて練る事で使用できるタイプです。

上の画像の様に直ぐに使えるタイプや水で練るタイプのパテで下地を作った後に(パテの下塗り・中塗り)、画像はありませんが、仕上用のパテを使用してパテを仕上げます。 

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コーナーテープや寒冷紗(かんれいしゃ)

内装のパテ作業のお供として「コーナーテープ(画像右)」と「寒冷紗(かんれいしゃ)(画像左)」という物があります。

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コーナーテープ

主に「出隅(でずみ)」部に張り付けて「角」を造るためのアイテムです。

出隅部は物などが当たると壊れやすい(石膏と紙なので)ので補強という意味と、見た目(角を綺麗にする)を綺麗にする為に使用します。

画像のコーナーテープは裏に糊が付いていて、紙を剥がして貼り付けるタイプの物ですが、「糊無しタイプ」の物もあります。

コーナーテープを貼りつけて、その後にパテを数回付けていき角を綺麗に造ります。

「テープ」という名前がついていますが、素材は樹脂製で必要な長さをハサミで切って使用します。コーナーテープを使用せずに「パテだけで成形」するとわずかな振動などでパテが割れてしまい、トラブルになってしまいます。

塗装屋が塗装を行う前に使用するように、クロス屋さんもクロスを貼る前に使用します。

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寒冷紗(かんれいしゃ)

メッシュ状の「目地補強テープ」です。これも色々な種類の物がありまして、グラスファイバー製の物や強化繊維製などの物があります。

ボードの合わせ目のパテが割れるのを防ぐためのアイテムです。

画像では青い紙テープを目地に見立てて貼っている所です。本来の寒冷紗は厚みがあり強度もありますが、塗装仕上げ向きではありません。

画像の物は「フセ目地テープ」と言いまして、両面テープになっています。厚みが薄く、塗装仕上げ向きの寒冷紗になります。

この様な工業製品が出る前は「和紙」や「布製」を使用していたみたいです。和紙や布製の寒冷紗は今でもあります。

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塗装下地と塗り壁材下地

ここからは実際の作業現場の画像とともに説明していきたいと思います。

今回のメインの内容は塗り壁材意匠性塗材や装飾仕上塗材ですが、塗装を行うための下地作り(主にパテ)と塗り壁材の下地作り(主にパテ)の違いから見ていきます。

塗り壁材用のパテ1回目

下の画像は石膏ボードの合わせ目に寒冷紗を貼ってから1回目のパテつけを行っています。同時にビスの凹みにもパテを行っています。

先にパテつけを行ってから、寒冷紗を貼る工法もありますが、今はあまり行われていません。

塗装用の場合は広くパテを行うのですが、塗り壁材用の場合はあまり広くパテを行う必要はありません。

塗り壁と言えば「コテ」を使用して作業するので、主に左官屋さんが行いますが、左官屋さんの場合はパテではなく、塗り壁材料で目地を埋めたり、別の下地材で合わせ目を埋める事が多いみたいです。

今回、画像にある木枠や鴨居など黒っぽい色の物は「家具屋さん」で作成し、家具屋さん付きの塗装屋(木工塗装屋)が工場で「染色塗装」しています。 

染色塗装については過去記事参照お願いします。paintwork.hatenablog.com 

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塗り壁材用のパテ2回目

1回目で使用したパテに色を付けて(黄色)2回目のパテを行いました。室内で暗く、同じ色だと2回目を行い忘れてしまう箇所などが出る場合があるので色を付けて行い忘れを無くします。

塗り壁材用のパテはこれで完了になります。

あみだくじみたいな枠の中はクロス貼り仕上げなので放置です。後でクロス屋さんがパテを行いクロスを貼ります。ここの現場は厨房以外の天井は全てクロスです

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印で囲っている部分が出隅部でコーナーテープを貼ってからパテを行ってます。糊無しのコーナーテープの場合はパテを付けてからパテを糊代わりとしてコーナーテープを後貼りします。どちらがいいとは一概には言えませんが、人それぞれ好みのやり方があるみたいです。

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塗装用のパテ

この部屋は天井・壁ともクロス貼り仕上げなので、クロス屋さんがパテを2回行っています。

塗装仕上げのパテの場合もこれとほぼ同じで、つなぎ目を隠すために広くパテを行います。この後に仕上用のパテを行い3回パテを行うのが基本的な回数になりますが、「不陸(ふろく)」があればさらにパテを行う事になります。

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下塗り(ベース塗り)

今回は塗り壁材と同じ色の水性艶消し塗料を下塗りとして塗ります。今回使用する塗り壁材の色は「ベージュと黒」の2色を使用します。

塗り壁材の施工は色々なやり方がありまして、今回の様に同じ色の塗料を下塗りとして塗る場合もありますし、下塗りは行わず塗り壁材を地塗りする場合もあります。

今回は、塗り壁材をあまり厚く塗らない(塗り壁材は1回塗りです)ので、同じ色の塗料で下塗りします。

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下塗り(ベース塗り)完了

一通り塗料を塗って、下塗り完了です。

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塗り壁材「意匠性塗材や装飾仕上塗材」

ここまで来てやっと本題の塗り壁材を塗る準備を始めます。

塗り壁材は色々なメーカーから発売されていますが、私が使用した事のある物は主にアイカ工業のジョリパット、フッコーのマヂックコート、エスケー化研のベルアートなどです。今回は、エスケー化研のベルアートという材料を使用します。

昔は明研化学工業というメーカーのマイルドプラスターという塗り壁材を好んで使用していました。明研化学工業は主に吹付材のメーカーで私の好きなメーカーの一つでしたが2008年に会社が無くなってしまいました。

外部塗り

今回は内装をテーマとしていますが、住宅などの外壁、塀などの外部にも塗る事ができますし、最近では新築の塀や門柱などに施工されているのをよく見かけます。

私の感想としては、外部では「汚れやすく、汚れが目立ちやすい」というイメージが強いです。そのため、各メーカーでは汚れが付着しにくい、汚れがついても雨などで流れ落ちるという、専用の上塗り剤(クリヤー系)も別途発売されています。

実際に使用した事がありますが、専用の上塗り剤は高額な部類の材料ですが、正直な所、効果は私には実感としてわかりづらかったです。

塗り壁材以外でもそうですが、骨材が入っている物や、凹凸のある模様などの塗装の場合は凹み部にホコリや汚れなどがたまりやすく、汚れが目立ってしまいますし、時間の経過とともに溜まったホコリや汚れが塗膜に染み込んでしまい取れなくなってしまいます。

現在ではシリコン樹脂やフッ素樹脂などの塗り壁材もありますので、高額ですがそのような材料を使用する事も検討する事が出来ます。

施工法

意匠性塗材や装飾仕上塗材と呼ばれる材料はコテ塗りによる施工が主な施工法になりますので、本来は左官屋さんが行っています。ですので塗装屋では施工した事がない業者も多いと思いますが、「吹き付け」による施工も出来ますので塗装屋でも施工する業者はあります。

コテ塗りの場合は様々なテクスチャー(模様付け)があり、表現方法なども色々ありますので施主様の模様選びは悩みどころでもありますが、一般的にはランダム性を活かした軽く均す程度の模様や、扇、くし引きなどの模様が多いですね。

もちろん、コテを使用するので左官屋さんに技術でかなうわけないのですが、あえて塗装屋の「下手くそな感じがいい」という場合もありましてなんだかわけがわからない状態です。私の塗り壁材師匠は塗装屋ですが、塗り壁材に関しては左官屋さんより上手いと評判の人で余計にわけがわからないです。

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骨材

材料の中にもあらかじめ細かな骨材が入っているのですが、質感や模様などによって、色々な種類や大きさの骨材を後から混入して材料を調整します。

今回はベージュ色に「1mmの寒水石と0.5mmの珪砂(けいしゃ)」、黒色に「1.5mmと1mmの寒水石、0.5mmの珪砂」をそれぞれ混入して材料を調整しています。

画像は1mmの寒水石です、白砂(はくしゃ)とも言っています。

昔は外壁の「リシン」塗装などにこの寒水石を混ぜて吹付していましたが、現在では骨材入りの物を使用したり、寒水石ではなく軽いスポンジ骨材などを混入してリシンの吹付を行う事が多いようです。(リシンなどの吹付自体減ってしまいましたが。)

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材料でパテ

念のために骨材を混入する前の材料でボードの合わせ目をパテ付けの要領で補強します。塗り壁材は一般の塗料とは違い、厚みも硬度もあるのと今回は1回塗りなので行いました。

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塗りたて

塗り壁材を塗って乾燥中の様子です。よく見ると縦横とパテつけを行った跡がわかりますが、乾燥後には消えてわからなくなります。

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乾燥後

塗り壁材が乾燥してパテを行った場所が完全にわからなくなりました。

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アップ 

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くし引き

基本的には上の画像のような軽いコテ模様の仕上げですが、アクセントとして、くし引き模様も行っています。

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もう一色の黒色もベージュ色と同じ様に下塗りを行い、塗り壁材を塗りますが、骨材の配合や模様を変えています。

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乾燥後。画像が少しボケているのでわかりづらいですね。(枠を黒で塗っています)

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厨房

厨房は塗り壁材ではなく、水性艶あり塗料で仕上げます。色は「グレー系」です。

厨房の壁や天井に使われているボードは石膏ボードではなく、ケイカル板といいまして、正式には「ケイ酸カルシウムボード」 といいます。建築業界ではよく使われている石膏ボードと並び不燃建材のツートップの片翼です。

イカル板は水回りや、半外部などの石膏ボードの苦手な場所などによく使われているボードです。半外部というのは「直接雨には当たらないけど、外部」というような場所です、住宅の軒裏とか。

 

塗装内容は、シーラー塗り→水性艶消し下塗り→水性艶あり上塗りとなっています。

パテに関してはボードの合わせ目には行わず、ビス部分だけ行います。厨房はお客様から見えない部分なのでコスト削減の為に目地にパテは行いません。(今回の場合)

画像は、天井、壁共に水性艶消し塗りまで行っています。印で囲んでいる箇所はステンレス板を張るので塗装は行っていません。

水性艶消し塗料を先に塗っているのはパテ付けの跡を隠すために塗っています。

仕上げの水性艶あり塗料を直接2回塗る方が別途艶消し塗料を購入する必要がないのでコスト的にはいいのですが、艶あり塗料を直接塗ると「パテ付けの跡」が浮き出てきてしまうからです。艶消し塗料は粒子が粗いので仕上げはもちろん、下塗りとして使用するとパテの跡が出ずに綺麗に仕上げる事が出来ます。

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仕上げ塗り

下塗りの上に水性艶あり塗料を塗って完了です。シーラーから計算すると3回塗りになりますが、上塗りを2回塗って4回塗りの場合もあります。

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最後に

今回の塗装作業はこの流れで終了しました。これから色々な業者が戦場の様に出入りするのでキズがついたり汚れたりしますので後は最後(オープン前)に手直しなどを行い完了になります。

店舗の仕事というのは作業環境や工期などの影響で、夜業(夜間作業)が当たり前の世界です。(現在はそれほどでもないですが、今回も夜間作業を行っています)

昔は何日も徹夜とかあって、休憩しに外にでて一息ついていると座ったまま寝てしまったりしてましたし、立ったまま寝てる人などもいて笑える状況もありました。(今はそういう時代ではないですが。)

工期も詰められているので、一業者でも遅れが出ると他の業者にしわ寄せがきてしまい迷惑をかける事にもなってしまいます。住宅などでも言える事ですが、様々な業者によって一つの物を造っていくので自分たちだけではなく、他業種の方たちともチームワークをよくしないといい物は出来ないです。

オープンしたら覗いてみようかな。

今回はこの辺で。

追記:
(id:ballooon)さんからブックマークのコメントで、「リシンでググったら毒物ってありましたが(; ゚д゚) 」とコメントを頂きました。

コメントありがとうございます。このコメントにお答えさせて頂きますね。

まずは「吹き付けリシン」でググって頂くとわかりますが、「毒物のリシン」は表示されなくなります。塗装におけるリシンと毒物のリシンはまったくの別物になります。

塗装でのリシンは「吹き付けによる砂壁状の仕上材」でして、昔と現在では構成材料は違いますが、日本での吹付による仕上げ材の種類ではもっとも古い物です。名前の由来を簡単に説明いたしますと、ルーツは「左官屋さん」になります。

リシンの見た目については過去記事参照お願いします。 

paintwork.hatenablog.com 

左官屋さんの仕上げ方の一つに「掻き落とし(かきおとし)」という仕上方法があります。このための既調合の材料が大正時代にドイツから輸入されていたそうです。その商品名が「リシン」だったそうです。

この仕上方法を「掻き落としリシン仕上げ」と呼んでいたそうです。その後、この材料の国産化をはかりさらにこの材料の応用で「吹付材」が出来たそうです。ですので初期の頃の「吹き付け作業」は左官屋さんが行っていたそうです。

昭和30年代くらいに従来の左官職から吹き付け塗装を専門とする「吹付屋」という新たな職業が生まれたそうです。時代の流れでしょうか、吹付専門の「吹付屋さん」は現在では少なくなっています。

ですので、ドイツから輸入されていた材料の「商品名のなごり」だと思われます。

因みに、塗装に関してはドイツからの技術や材料、機材など優れた物が多く、参考にしたものが沢山あります。ドイツってすごいですね。

追記:おわり