work111 木の塗装 えんこ板と羽目板の塗装
はじめに
今回は塗装量は少しなのですが以前作業した、縁甲板(えんこいた)と羽目板(はめいた)の塗装記事になります。
築100年くらいの古民家で、私と同じ年の大工さんが一部やり替えを行うので既存の色に合わせて塗ってくれとの事。
最初に聞いた話だと既存部は「弁柄(ベンガラ・紅柄とも書きます)」を塗ってあるのでそれに合わせてほしいとの事でしたが現場で確認すると違っていましたので、着色剤に少し砥の粉を混ぜて染色クリヤーで仕上げる事になりました。
今回使用する材料とは違いますが、弁柄や柿渋などにも少し触れたいと思います。
弁柄や柿渋
弁柄は顔料なのでそのままでは塗料みたいには塗れないので希釈剤(液体と混ぜて塗りやすく)となるものが必要なのですが、年代や地域などによっても様々です。ですので塗りやすくなれば適当でいいって事です。
焼酎などのアルコールや油などに混ぜて塗り、拭き上げます。一般的には「柿渋」などに混ぜて塗りますが、柿渋は臭いが独特です。
弁柄を塗った後に拭き上げ作業を行い、椿油などの「不乾性油」や荏油(えのあぶら・エゴマ油)や桐油などの「乾性油」を塗る場所や用途別に上塗りとして塗ります。また、漆を塗って拭き上げ仕上げとして行う場合もあるようです(漆の仕上げは行ったことはありませんが条件がそろわないと乾燥しないのでは?とは思います)。
油系で言えば私が坊主(見習い)の時は、ペンキ(OP。SOPではありません)を希釈するのにボイル油やプリマ油などの油で希釈してました。2液型の弱溶剤のウレタン塗料が出てくる前などは「刷毛壺(保存箱)」にボイル油とプリマ油を入れて刷毛の毛並みを揃えてウエスなどを巻き刷毛の保管を行っていました。(今では刷毛も使い捨て感覚です。)
縁甲板(えんこいた)と羽目板(はめいた)
今回塗装を行うのは縁甲板と羽目板になりますが、どちらも無垢材の「板」です。縁甲板は床板で羽目板は壁や天井に張る板です。無垢材の板なので色々な木の種類や仕上げ方の板があります。調色するために(既存に合わせるため)一枚同じ縁甲板をもらいました。
この板の両端を一枚一枚大工さんが凸凹に実加工(さねかこう)して張っていきます。
作業の流れ
調色
今回は染色塗装ではありますが、砥の粉の量を少な目にすることになりました。木の種類によって着色剤の色の吸い込みのちがいで「色ムラが酷く」なる場合がありますが、これはもう「素材の問題」なのでしょうがない部分もありますが、酷い場合は「カラークリヤー」などで「ぼかす」事も出来ますが、木目が薄くなるデメリットもあります。
今回は既存の部分も同じ様な感じなのでぼかす事なくそのままで行こうということになりました。
縁甲板と羽目板で別々の色なので2色つくる必要があります。もらった板を半分に切って調色用とクリヤーの艶用に使用します。
艶サンプル
どっちがどっちなのか画像では分かりづらいですが、半分が半艶で半分が艶消しです。
お客様にご確認頂くと、半艶がいいとの事で半艶に決定しました。
作業前
作業前の写真を撮り忘れていました・・・。
染色中
染色中は塗りつけや拭き取りなどの作業が忙しく、誰かに写真を撮ってもらわなくてはならないので、このような狭い場所では画像を撮っている時間がありませんでした。ですので画像無しです、すみません。
下塗り1回目
染色作業の後、2液型溶剤のウレタンサンディングシーラーを「吹き付け」で1回塗りました。
ヤスリかけ2回目
腰壁(羽目板)染色 → 床板(えんこ板)染色 → 下塗り → ヤスリかけ → 下塗り2回目 → ヤスリかけ2回目(今ココ)
着色前の素材板と
着工前の画像を撮り忘れていたので。。。
完了
今回は下塗り2回、上塗り2回の工程で作業完了です。
最後に
今回の記事中に出てきた「弁柄」や「柿渋」などは私にとっては、今では殆ど使用することのない材料ですが、日本古来から使用されている無害で安心して使用出来る材料として今でもビジネスとして使用したり販売されたりしています。もちろんそれに対して私の感想は批判などは何もありません。
私の考えは材料や道具など日々 改良や進化を重ね今日に至っていると思っていますし、これからも改良や進化するでしょう。メリットもありますがデメリットもあります。ですので今日では使用頻度が少なくなっています。
文化財などの古い物の改修などでは同じ材料を使用しないと文化財として認められなくなるので使用しますが(塗装でいえば丹塗りなど)、よく内容を理解していない人に限ってそういう材料を使用したがる傾向にあると感じます。
丹塗りの話が出てきたので機会があれば神社の塗装の記事も書いてみたいと思います。
今回はこの辺で。