work2 耐久年数のかんちがい
塗装の耐久年数
私がお客様からよく質問されて、質問に対しての返答が長くなってしまうのは、
「どれくらい持つの?」です。
はじめにお断りしておきますが、「古くなったら建て替える」方には全くこの記事は関係ないです。
素材や場所によって違う耐久年数
仮に外壁の塗装の耐久年数が10年くらいだった場合、大抵の業者は「10年くらいは持ちます」と言うでしょう。なのでお客様は「全体的」に10年くらいは持つ と、とらえてしまいます。
ですが、実際は部位によって同じ塗料を塗っても耐久年数がちがうのです。
その理由はさまざまですが、私の場合はそのような事も含めてお客様と相談しお互いが納得できるように努めて工事に着手しています。
また、一口に「持つ」 と言っても、塗膜性能が落ち始めの時期なのか、塗膜の膨れ、剥げなどを生じた状態の時期なのかもまちまちです。
立地条件やさまざまな状況などにより、傷み具合の進行度はかわりますし、ハッキリと「〇年です」と言えず、「〇年~〇年くらいです。」 と、あいまいな返答しか出来ないと思います。
理由
今回は、「では、なぜそのような返答しかできないのか」を書いてみたいと思います。
最初に理解しなくてはいけない事は、塗装工事の塗装とは、物の表面しか塗装出来ないという事です。例外もありますが裏側は物理的に塗れない事が殆どです。したがって、物をラップで包むように保護出来ないという事です。
例えば、裏側に湿気や結露などが起こった場合、裏側は塗装していない(出来ない)為、裏側から影響を受け、表面の塗装に影響を与えることもあるという事です。
裏側に湿気が多い場合などは物が湿気を吸収し放湿する時に塗膜を押し上げ膨れや剥げなどを起こす場合もあるという事です。ですので、どんなに正しい施工を行っても、状況によっては問題が起きる事もあるという事です。
塗料の種類による耐久年数の違い
一般的に家の塗り替えなどに使われている塗料の種類は、大まかにわけて水性系塗料か、溶剤系塗料(その中でも弱溶剤系が殆ど)の2種類です。
そのどちらにもグレード別に、
ウレタン塗料 耐久年数 8年~10年くらいと言われています。
シリコン塗料 耐久年数 10年~12年くらいと言われています。
フッ素 塗料 耐久年数 15年~20年くらいと言われています。
(私の経験上ではこれらの数値は溶剤系のように感じます、水性系ではもう少し少ないように感じます。あくまで私感ですが。)の3種類があり、この3種類のなかから使用する事が殆どです。
それ以外にも特殊な種類の塗料やグレード、(例えばラッカー系やエポキシ系、光触媒、無機など一般の人には馴染のないグレードの塗料などもあります)。
他にも一般的な塗料 (外壁吹き付け用塗料なども含む) などもありますが、今回は外壁を塗り替え塗装する上で一般的に使われている、ウレタン、シリコン、フッ素 の3種類を例にとって書いていきたいと思います。
まず、塗料の耐久年数や種類などを考える前に、家を塗り替えする上で知っていなければいけない事があります。
1)そのお家がどんな素材で出来ているのか?。
2)はじめての塗り替えになるのか、すでに塗り替え等を過去に行っているのか。
この2点はとても重要であり、塗料選び、仕上がり具合や後の耐久年数、工事予算などにも影響します。
では 1)の、
「その家がどんな素材で出来ているのか?。」 についてですが、これは、家の塗り替えにおいては外壁だけを塗装するのではなく、その他の部分、軒、破風、樋などに始まり庇や雨戸など、(部位についてわからない方は検索すればすぐにわかると思います)家全体として塗装出来る部位は塗装することが殆どだからです。
外壁も含め、部位によって素材がさまざまな事なのと、(簡単な例では、外壁だとサイディング材やモルタル。他の部分では木部や鉄板、ボードなど)。
一例を挙げると、
・壁がモルタル
・破風が木
・庇が鉄板
などの家では全てに同じ塗料を塗ってもそれぞれ耐久年数が違うと言う事です。上で挙げたおおよその耐久年数と言うのは大体が「壁」の耐久年数なんですね。
空調管理された室内でその素材に同じ塗料を塗れば、耐久年数も多分同じくらいになると思いますが、「屋外」の環境でさまざまな自然現象にさらされているわけですから「木」だと塗装の膨れや割れ、「鉄」だと錆びなど、湿度や紫外線の影響を受けやすく、素材が違うと耐久年数もかわってしまいます。
樋などの塩ビ製品などは温度変化(夏の高温や冬の低温)による伸縮があり、塗装の傷みの進行度も他の素材より早くなります。
また、素材についての塗装耐久度の違いとは別に、取り付けられている方角や向きによっても同じ素材でも傷みの進行度はかわってきます。
次に 2)の、
はじめての塗り替えになるのか、すでに塗り替え等を過去に行っているのか。についてですが、一般的には「水性塗料の上には溶剤塗料は塗れない」という事です。
これはちょっと特殊なので全てに言える事ではないのですが、一例を挙げますと、水性塗料の上塗りで仕上げを完了していた場合、その塗膜の上に溶剤塗料を塗ると水性塗料の塗膜を溶かしてしまい正常な塗装が出来なくなったりします。
もちろん水性塗料の上に溶剤塗料を塗る施工法もありますので一概には言えませんが、場合や素材によっては限られた施工方法しか出来ない場合があるという事です。
おおよその目安
上でのべた例などを踏まえ、私の経験上から耐久年数の一例を挙げますと、溶剤系(2液型弱溶剤塗料)のウレタン塗料では、 壁の耐久年数が、 8年~10年くらいだとすると、
木部だと「3年~5年くらい」
鉄部だと「5年~7年くらい」
がおおよその目安になってきます。あくまで「おおよその目安」ですので、目安年数より上下することももちろんあります。
まとめ
最後のまとめとして、現実的な話をしますと、「塗膜性能が落ち始めの時期」と、「塗膜の膨れ、剥げなどを生じた状態の時期」、では工事費用も変わります。
傷み具合が進んだ状態ですと塗膜の処理工程や下地調整などが必要な分、それらの費用も掛かるわけです。
全体的な塗装工事をする場合は足場も必要になります。塗装工事とは別に足場費用がかかるわけです。
壁の耐久年数が8年~10年くらいなのに対してその他の部位の耐久年数は少なめなので壁の耐久年数に合わせて全体的な塗装工事をするのでは、他の部位の塗装耐久年数が過ぎている事になります。
では、素材ごとの耐久年数に合わせて塗装するとすれば、その度に足場が必要になり足場費用もかかります。足場を必要とせず工事が出来る場合を除けば、そのような工事は現実的ではありませんよね。
「ではどうするのか?」といいますと、耐久年数の低い素材には塗料のグレードを上げ、出来るだけ全体的な耐久年数を揃えるようにする事や、部材による耐久年数を足していき、その部材の種類の数で割る、
(壁10年+木5年=15年 15年÷2種類の部材=7.5年)
壁には少しはやい7.5年、木には少し遅い7.5年 など、施工サイクルを考えてみたり。
工事には費用が掛かりますので、塗料のグレード別や施工方法、その家の状況に合わせた工事内容を丁寧に相談にのってくれる業者が必要だと思います。
今回はこの辺で。