paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work 81 DIY 塗装の前の下地作り その① 研磨

前置き

塗装作業には住宅・自動車・家具製品・工業用品・ホビー等々様々な塗装分野があり同じ塗装といいましても各職業にわかれています。それぞれで方法や材料などが違い一括りにはできませんが、どの作業においても最も重要で共通している事柄として「下地作り」があります。下地を綺麗にする事が出来なければどんなに上手なプロでも上手く塗装を仕上げることは出来ません。


DIYで塗装を行う場合も同様で下地を綺麗にする事が出来ればプロ並みな仕上げも可能です。DIYで塗装を行う際には上塗りや色などの見た目にばかりに注目がいきがちで、下地作りについては疎かになりがちです。塗装の目的は「美観と保護」ですので、見た目だけがよくても直ぐに塗料が剥げてしまうなどのトラブルが起きないように下地作りの知識を知る事はとても重要です。


そこで、下地作りについて素材や材料、使用する道具を用途別に絞って書いていきたいと思います。今回は第一回目で「研磨」について書いてみます。素材別や用途別の研磨についてはそれぞれ別の記事で書いていきたいと思います。

paintwork.hatenablog.com 

下地の作り方を塗装がはじめてという方にも理解して頂くために解りやすく解説して行きたいと思います。

 

研磨

ヤスリがけ(研磨)

塗装の前の下地作りの基本は「研磨(ヤスリがけ)」です。
一般的には「研磨」や「サンディング」という方が馴染みがあると思います。塗装物に対してヤスリかけを行いキズを付け、その傷に塗料が入っていく事で下地への塗料の密着をよくする効果が見込める作業になります。「足付け」とも呼ばれています。

また、ヤスリがけには目の粗い表面をなだらかにするという目的もあります。ヤスリには数字で表す「番手」というものがあり、粗目から細目まで色々な種類の番手のヤスリがあります。一般的には番号が小さいほど目が粗く、番号が大きいほど目が細かくなります。

その他では穴埋めや凹み部を埋めるための材料である「パテ」などの研磨、鉄部などの「錆落とし」を行う作業でもヤスリがけを行います。また、金属の錆び落としなどを行う作業を「ケレン作業」といい、規格で定められた種別(錆び落としの度合い)もあります。 

使用するヤスリの種類

ヤスリ自体の種類は沢山ありますが、塗装作業で主に使用するヤスリは紙製の「紙ヤスリ」や布製の「布ヤスリ」と呼ばれる物で、サンドペーパーとも呼ばれています。台紙の紙や布に砂状の研磨剤が貼り付けられていて、この砂状のザラザラの研磨剤の大きさで粗目や細目などのキズを付ける事が出来ます。その他のヤスリではスポンジ製の物や、繊維を固めたブロック状の物(錆取りたわし)などを使用します。

サンドペーパー

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左は空研ぎ用・右は耐水用

塗装作業では基本となる「紙製」で出来たヤスリです。
「空研ぎ用」と「耐水用」があり、持ちやすい適度な大きさに切ったり折り曲げたりして使用します。基本的に空研ぎ用はそのまま擦りつけながら使用します。

耐水用は「水研ぎ」と呼ばれる、水を付けながら研磨を行う作業に使用します。耐水用は水を付けながら研磨が出来るので目詰まりが起きにくく、摩擦熱を抑える効果もあります。
耐水用の特徴として、空研ぎ用に比べて高い番手(目の細かい物)があります。一般的には同じ番手のサンドペーパーでは水研ぎの方が表面が滑らかになりますが、水研ぎを行った表面は水分を含んでしまいますので充分に乾燥させる必要があります。

大まかにわけて「空研ぎ」はオールマイティな研磨用、「水研ぎ」は目詰まりしにくいのと摩擦熱を抑える効果がある研磨、研磨跡が滑らかになるので仕上げ前に行う研磨用などと覚えておくのがいいでしょう。DIY作業では殆どといっていいほど水研ぎは必要ありませんが、「鏡面仕上げ」などの超仕上の前に行う場合もあります。

豆知識としてサンドペーパーは「同じ番手」同士でサンドペーパーを擦るとお互いが削り合う事で目が細かくなります。例えば、「#320」番手のサンドペーパー同士を擦り合わせると、力加減にもよりますが、簡易的に一つ上の番手~倍近い番手までのサンドペーパーに早変わりします。ですがこれは「裏技的」なやり方ですので、作業に必要な番手の物を揃えておいた方がいいでしょう。
主に空研ぎ用は「#80~#400」くらいまで、耐水用は「#100~#2000」くらいまであります。 

 

空研ぎと水研ぎの違い

空研ぎは手軽に行える研磨法ですが、目詰まりしやすい事や研磨カスが飛散しやすい事などが挙げられます。目の細かい番手ほど目詰まりしやすくなります。

水研ぎは目詰まりしにくい事や研磨による摩擦熱を抑える事が出来、研磨した表面が空研ぎよりも滑らかになりますが、研磨対象物が水分を含んでしまう事が挙げられます。

種類にもよりますがパテなどを研磨する時には水分を含ませる事になるので水研ぎが出来ない物もあります。また、素地の木材などに水研ぎを行っても水分を多量に含ませる事になるので行いません。

どちらの場合も研磨を行った場合は清掃や脱脂をきちんと行い、水研ぎを行った場合は、よく乾燥させる事が必要になります。 

目詰まり

研磨紙で研磨を行うと どこかのタイミングで必ずと言っていいほど「目詰まり」をおこします。目詰まりがおきると研磨カスなどが研磨紙に付いて、本来の研磨能力が失われます。サンダーなどの工具を使用した研磨では摩擦熱などで研磨カスがこびりついてしまい研磨紙がダメになってしまう事もあります。

目詰まりをした研磨紙をそのまま使用すると、研磨カスで本来の研磨キズとは違う大きなキズが出来てしまう事があります。ですので研磨力に異変を感じたら目詰まりしていないかをすぐに確認する必要があります。

空研ぎでは研磨紙を軽く叩いたりすれば目詰まりは解消されますし、水研ぎなら水バケツの中などで振ると目詰まりを解消する事が出来ます。研磨紙は消耗品なのでダメになってしまうのはしょうがない事ですが、目詰まりを解消していく事で長持ちさせる事が出来ますし、研磨カスで大きなキズを付けないようにする事も大事です。

布ペーパー 

「布製」のサンドペーパーです。
布製なので紙製のヤスリよりも丈夫で耐久性があります。紙製よりも丈夫で研磨力も強いので木材の荒材や金属製錆び落としなどの硬い物を研磨するのに向いています。主に「#80番手~#400番手」くらいまであります。

 

スポンジペーパー

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スポンジ製のサンドペーパーです。スポンジ製なので紙製の物よりも丈夫で耐久性もあります。持ちやすく研磨が行いやすいです。スポンジ素材特有のクッション性がありますので曲面や角などの研磨では非常に便利です。私の場合は主に室内木部や家具の塗装などで使用しています。

スポンジ製なので耐久性があり非常に長持ちします。使い古して古くなっても、表面が切れたり剥けたりしていなければ、上の番手としても使用できます。

目の細かい番手でも空研ぎ出来るので、水研ぎなどを行いたくない場合でも有用です。

木部の艶消し系クリヤー仕上げなどでは、塗装後のホコリ取りや手触り感をよくする為に、使い古したスポンジペーパーで撫でてやればキズを付けずに仕上げる事もできます。

スポンジパーパーは力加減により多少の研磨力が変わりますので、一枚で「#120〜#180相当」・「#240〜#320相当」・「#320〜#600相当」・「#800〜#1000相当」・「#1200〜#1500相当」などの物があります。

 

錆取りたわし

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細長いナイロン繊維に研磨粒子を付けてブロック状にした研磨たわしです。網の目状の形状なので目詰まりが少なく、素材を問わず荒材の研磨に適しています。旧塗膜が剥離している部分などの塗料剥がしにも最適です。
粗目は「#60~#80相当」、細目は「#100から#120相当」の番手の物があります。

 

 

サンドペーパーの番手の目安

番号の手前に付けられている記号の「#」は、メッシュと読みます。記号に続いて付けられている数字は研磨粒子の大きさを表しています。これは「1インチ=25.4mm」の長さに研磨粒子が幾つ並んでいるかを表しています。目の粗い物ほど研磨を行った際に、ついてしまうキズが大きくなるため、徐々に番手を上げて研磨していく事で研磨によるキズを小さな物にしていきます。
発売されているサンドペーパーの番手で一般的な物を挙げると、「#80・#120・#150・#180・#240・#320・#400・#600・#800・#1000・#1200・#1500・#2000」などの物があります。 後述する粗目や細目などの目安は私個人の感想です。

#80~#150 粗目(あらめ)

木材などの荒材の研磨や旧塗膜などを早く剥がす作業の際に使用します。また、金属の錆び落としなどにも使用します。研磨力は強いですが、この番手で研磨したキズはかなり大きなキズになります。

#180番~#320 中目(ちゅうめ)

最初の下地作りに使用するサンドペーパーとしては使用頻度の多い番手です。主に下塗りや中塗り前の下地調整で使用します。パテなどの研磨にも使用します。

#400~#600 細目(ほそめ)

中塗りや上塗り前の下地調整としての研磨に最適です。DIYだけでは無く,塗装作業においては中目・細目のサンドペーパーは最も使用頻度の多い番手です。

#800~#1200 極細目(ごくほそめ)

上塗りを塗り重ねていく際や、超極細目の使用を前提とした細目の研磨キズを消していく際に使用します。この番手(#600あたりから)の物は目が細かいので、空研ぎ出来る物もありますが、研磨時に目詰まりしないように耐水ペーパーを使用した水研ぎを行う物が多いです。

#1500~ 超極細目(ちょうごくほそめ)

自動車やホビー、家具製品などの超仕上げを目的とした塗装の前後に使用します。主に塗装後に付着してしまったホコリやゴミなどの除去や鏡面仕上げ前など、超極細目で研磨した後にコンパウンドでの磨き作業を前提にした研磨に使用されます。
コンパウンドとは液状や練り状の研磨剤の事で主に仕上げの研磨剤として用います。 

道具

塗装物の素材や大きさ、仕上げの方向性によって、綺麗な平らな面を作るためにサンドペーパーでの研磨では揃えていた方がよい道具と、あると便利な道具があります。

あて板(あてゴム)

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サンドペーパーを取り付けたり張り付けたりして「平行な面」を作るために必須の道具です。大きなものから小さな物まであります。鉄製・木製・ゴム製などの種類があります。新品の素材を塗装する時にはあまり必要のない道具ですが、補修塗装などの場合や、凸凹を平面にする場合、パテなどを削って平面にする場合など、平面を作るためには必要です。角材の切れ端や捨ててしまうようなプラスチック製のカードなどでも応用する事が出来ますが、精度は落ちてしまいます。

 

 

サンダー

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電動の物やエアー式の駆動方式の物があり、偏心運動や回転運動で振動する事で研磨を行います。人力では大変な研磨作業を効率的に行うのに使用します。

大きさや形も丸い物、四角い物、アイロン形をしたものなど、使用環境や対象物の種類形状により幾つかの物があります。振動方式にもオービタルアクション・ランダムアクション・シングルアクション・ダブルアクションなどいくつかの種類があり、用途別に使い分けます。

画像の物は小型のオービタルサンダーです。オービタルサンダーは四角い形状をしており、ペーパーを挟み込んで固定する物が多いです。画像のロール状のペーパーは専用の物ではありませんが、裏面に糊がついていてピッタリとサンダーに固定する事が出来ます。通常の紙・布ペーパーも使用可能でサイズに合わせて切る事で取り付ける事も出来ます。

オービタルサンダーは他の種類のサンダーと比べると研磨力は弱いですが、手頃な価格帯からあり、取り付けるペーパーなども通常の物が使用できますので、DIYなどでの用途では私的にはオススメです。注意する点として粗目のサンドペーパーで研磨した時などに、偏心運動のキズ跡が出てしまう事がありますので力を掛けて押さえすぎないように研磨する事が必要になります。

シングルアクションサンダーやランダムアクションサンダー、ダブルアクションサンダーなどは丸い形状をしていますので、マジックパットなどで貼り付ける専用の丸いペーパーが必要な場合が多いです。

その他研磨力の非常に強いベルトサンダーなどもありますが、あると便利なのですが、塗装作業では使用する機会が少ないです。

 

 

最後に

上に挙げたヤスリを使った研磨は、塗装作業において 最初の一歩になります。私が見習いになった当初は、来る日も来る日も雑用とマスキング(養生)、研磨作業でした。塗料はおろか下塗りさえもさせてもらえません。研磨作業は思った以上にしんどい作業です。今思えば良い経験となりましたが、現在でこのような事ばかりさせられるとブラ・・おっと。

過去記事でサンドペーパーで研磨するだけで簡単に出来るエイジング仕上げの一つを書きました。 

paintwork.hatenablog.com

 

今回はこの辺で