work36 木の塗装 木材保護塗料
木材保護塗料
今回は 建物などの「外部」での「木」の塗料、「木材保護塗料」について書いてみたいと思います。
- 木材保護塗料
- これまでの木材保護塗料
- 木材保護塗料の定義
- 木材保護塗料製品
- 大阪ガスケミカル株式会社
- ロックペイント株式会社
- 和信化学工業株式会社
- 大谷塗料株式会社
- オスモ&エーデル株式会社
- 他にも
- 塗り替えサイクルについて
- 造膜タイプと浸透タイプについて
- DIYなどでの注意点
- 木材保護塗料(WP)塗りの一例
「木」に塗料を塗る事によって「木材の保護」をするわけですが、外部での木材への塗料には定められた「規格」が存在するのをご存知でしょうか。
木の塗装には以前の記事にも書いたとおり、「木目を消してしまう」塗り方と、「木目がみえる(木目を活かす)」方法があります。どちらが良いと言う事はないのですが、(どちらも一長一短があります)目的や用途などにより、塗り方や塗料を変えます。
今回紹介する、「木材保護塗料(WP)」は外部での、「木目がみえる(木目を活かす)」施工法の塗料に対しての規格です。
よく「〇〇ステイン」(〇〇はオイル、水性などが入ります)と、勘違いされる方がいますが、ステインは着色材の事ですので、「木材を保護」する働きはまったくありません。
これまでの木材保護塗料
「木材保護塗料」は、木材を長期にわたり保護する事を目的とした塗料なのですが、目的や機能性、仕様、内部用、外部用などの種別や統一規格がありませんでした。
ですので、各材料メーカーは独自の自社表現や説明を行っていた状態でした。屋内用と屋外用でも、性能や材料の種別(油性や水性)が異なり、したがって業者によっても、使用する材料もまちまちでした。
そこで、「日本建築学会 (JASS)」が、「木材保護塗料塗り(WP)」 という規格を定めました。この「木材保護塗料塗り(WP)」というのは、屋外で木材を保護することを目的とした塗料のことを言い、木材保護塗料と呼ばれる塗料になるには、「定義」が決められておりその定義に沿っていないと「木材保護塗料(WP)」とは呼べない事になりました。
木材保護塗料の定義
簡単にいいますと、規格(JASS規格)が統一されて、防虫剤・防腐剤・防カビ剤・の、「3種類の薬剤」が入っていて、「木目がみえる(木目を活かす)」塗料。と、いうのが定められた規格の「木材保護塗料(WP)」なのです。
※W.Pステイン(Wood Preservative Stain 木材防腐ステイン)= 木材保護着色塗料
追記:公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成28年版では、「かび抵抗性」が追加されました。
木材保護塗料製品
ここからは、日本建築学会 (JASS)で定められたWP規格に適合する、私がよく使用している材料(塗料)メーカーの、「木材保護塗料」をおおまかに紹介したいと思います。
(画像や紹介文は各メーカーHPより引用しています)
各HPよりの紹介文を抜粋していますので「油性」や「溶剤」など、表記は違いますが、同じ種類との(成分は違うでしょうが)感覚でとらえていいと思います。
大阪ガスケミカル株式会社
私的感想
キシラデコールシリーズは私がもっとも良く使う塗料です。私が最初にキシラデコールに出会ったのは30年ほど前でしたが、その頃からすでに、「木材保護塗料」(規格はありませんでしたが)としての知名度は高かったです。
その頃からは、少しづつ改良などされているのでしょうが、現在でも基本的には変わってはいないと思います。最初は「武田薬品工業株式会社」が輸入販売していましたが、その後、「日本エンバイロケミカルズ株式会社」が輸入販売、現在は、「大阪ガスケミカル株式会社」が輸入販売を行っています。
日本独自の開発として、「キシラデコールやすらぎ」があります。この手の塗料は単体での「透明色」は使用出来ませんでしたが、「キシラデコールやすらぎ」は単体での透明色の使用を可能にし、「UVカット」の機能も兼ね備えています。
また、「木材保護塗料(WP)」ではありませんが、屋内用・水性で、F☆☆☆☆(フォースター)「(ホルムアルデヒド放散等級)」適合品の「キシラデコールインテリアファイン」、「キシラデコールインテリアファイントップコート」などもあります。
キシラデコール
(油性・浸透タイプ・屋外用)
発売以来40年の実績を持つ木材保護塗料の定番ブランド。多くの採用実績が高い防腐・防カビ・防虫効果を証明しています。
( 画像元:大阪ガスケミカル株式会社)
キシラデコールフォレステージ
(油性・浸透タイプ・屋外用・低臭タイプ)
キシラデコールの性能をそのままに低臭性を実現。
( 画像元:大阪ガスケミカル株式会社)
キシラデコールやすらぎ
(油性・浸透タイプ・屋外白木仕上げ用)
木の色や質感、木目の美しさをそのまま生かした、透明感のある仕上がりを実現しました。色持ちのよい紫外線カット顔料(超微粒子顔料)が効果的に作用し、日光や雨から木材を保護します。
( 画像元:大阪ガスケミカル株式会社)
キシラデコールコンゾラン
(水性・造膜タイプ・屋外用)
造膜タイプなので古材でも明るく仕上げることができる。
( 画像元:大阪ガスケミカル株式会社)
ロックペイント株式会社
私的感想
私のイメージでは車両用の塗料のイメージが強いですが、昔からキシラデコールと並び知名度はありました。カラーによっては、キシラデコールと併用していました。
ナフタデコール
(油性・浸透タイプ・屋外用)
フタデコールは、薬効のすぐれた防腐、防虫剤を配合した、溶剤系の外板用ステインです。木部への浸透がよく、木の表面で塗膜を作りませんので、木材のソリや割れが起りにくくなっています。顔料着色型ですので染料タイプのステインに比べて耐候性にすぐれ、にじむことがありません。
(画像元:ロックペイント株式会社)
和信化学工業株式会社
私的感想
和信の材料(塗料)は私のイメージでは、「木材保護塗料」というよりも、家具系の塗装や、内部での木部仕上げの塗料のイメージが強いです。
他の木材保護塗料では「油性」が主な製品が多く、外部使用での「水性木材保護塗料」では使用させてもらってます。
「アクア」、「ラテックス」は屋外にも使用できる塗料にもかかわらず屋内用塗料における、ホルムアルデヒドの放散量を規制しているF☆☆☆☆(フォースター)の基準にも適合しています。
木材保護塗料は、外国製(輸入)も多い中、数少ない「国産」塗料としても印象が強いです。
前の記事、work35 DIY 水性塗料で塗る ちゃぶ台の塗装と下地の話 で、使用している「水性ウレタンクリヤー」は和信製です。
ガードラックアクア
(水性・半造膜タイプ・屋内・屋外用)
水系木材保護塗料の先駆け的存在で、一回塗り仕様で工期短縮が可能。濃い色から明るい色へ塗り直すことも可能。木材を長持ちさせるマイクロカプセル入り。
(画像元:和信化学工業株式会社)
ガードラックラテックス
(水性・浸透タイプ・屋内・屋外用)
待望の水系浸透タイプの木材保護塗料。水系でありながら溶剤系のような、木目を活かした鮮明な仕上がり感です。
(画像元:和信化学工業株式会社)
ガードラックPro
(溶剤系・浸透タイプ・屋外専用)
木材保護塗料の黎明期より、選ばれ続けて30年の実績を誇っています。日本の気候・風土に合わせた純国産の木材保護塗料。
(画像元:和信化学工業株式会社)
大谷塗料株式会社
私的感想
和信と同じく大谷塗料の材料(塗料)は私のイメージでは、「木材保護塗料」というよりも、家具系の塗装や、内部での木部仕上げなどの塗料のイメージが強いです。
特に木部用の2液型のウレタンサンディングやクリヤーは、家具製品や室内木部の塗装作業ではお世話になっています。
木材保護塗料として「水性・自然系」と 国産の塗料では比較的珍しいと思います。
※自然系の塗料などを拭き取ったウエスは、「自然発火」する可能性があります。各塗料毎の説明書をよく確認し、作業する必要があります。
水性VATON+(水性バトンプラス)
(水性・自然系・屋外用)
人と環境に優しく、耐候性のよい水性自然系木材保護塗料です。主原料は亜麻仁油等の植物油、顔料はベンガラ等の無機顔料、薬剤は植物由来のヒバ油等を使用した、高い安全性と溶剤系に劣らない耐候性を有した塗料です。日本の気候風土に合わせて杉や檜の
国産材の耐候性が向上するように開発した国産製塗料です。
(画像元:大谷塗料株式会社)
オスモ&エーデル株式会社
私的感想
近年「自然塗料」という製品が認知されるようになってきました。 内装用のオスモカラーは「ヨーロッパ規格EN71-3玩具安全基準」に合格しており、幼児向け玩具や遊具、家具の塗装に使われているそうです。
オスモカラーにはホルムアルデヒドなどの有害な物質は一切含まれていなく、「F☆☆☆☆(フォースター)」の要らない告示対象外塗料だそうです。
オスモカラーなどの自然塗料は新築時に採用される事が多いですが、植物油(オスモはひまわり油)を主原料としている為、油性や水性の「塗料」と比較すると人体への影響は無いに等しいと思います。ですが、「完全に自然素材」だけで作られているというわけではなく、極微量の石油由来成分を含むそうです。(他の塗料に比べればまったく影響はないくらいの量だそうです)
使用されている成分は無毒といわれているそうですが、食品や植物でのアレルギーなども人によってはあるので、天然素材だからと言って、健康被害が無いわけではないです。
オスモカラーウッドステインプロテクターには、「木材保護塗料」としての「防腐剤」が含まれていますので、自然塗料ではありますが、誤解の無いように注意しなければいけません。
オスモカラーウッドステインプロテクター
(自然塗料・屋外用)
植物油の浸透保護力に加え、高品質顔料配合で美しい仕上がり。日本の気候に対応した高耐候性自然塗料です。塗り替え時は面倒なサンディングをする必要がなく、そのまま1回上塗りするだけです。
(画像元:オスモ&エーデル株式会社)
他にも
上で紹介した材料以外でも、色々な会社から「木材保護塗料」は発売されています。
例えば、
玄々化学工業株式会社
サドリンクラシック、サドリンエナメル
株式会社エービーシー商会インサル事業部
三井化学産資株式会社
ノンロット205N Zカラー、ノンロット205N Sカラー
大阪塗料工業株式会社
ニューボンデンDX
トーヨーマテリア株式会社シッケンズ課
セトールHLSe
などなど、あります。私が知らないだけで、それ以外にもあるかも知れません。
塗り替えサイクルについて
キシラデコールを例に取ると、最初に2回~3回塗りの標準塗装仕様を行い、第1回目の塗り替えは2~3年後、以後は5年毎を目処として再塗装するのが、メーカーの仕様ですが、浸透性タイプの塗料の場合、塗れば塗るほど(塗り回数が多くなれば)、「色が濃く」なって行きます。
また、複数回の塗り重ねで、「浸透タイプ」の塗料であっても、表面に塗膜が出来てしまう塗料もあります。
造膜タイプと浸透タイプについて
今回紹介した塗料は基本的には「浸透タイプ」です。
浸透タイプとは、表面に塗膜をつくらず、木材に染込んでいく塗料の事です。この為、塗料の「膨れ」や「剥がれ」はおきません。
その代わり、元が「濃い色」に対して「薄い色や明るい色」を塗っても「色つき」が悪く、見本通りの色にはなりません。
塗り替えの際には、「同じ色」もしくは「元の色より濃い色」しか、塗っても意味が無い事になります。(この辺に関しては 剥離、サンディング作業や、木材漂白作業などはしない前提です。)
造膜タイプや半造膜タイプ
造膜タイプや半造膜タイプの塗料は、一般の塗料ほどではないですが、薄く表面に塗膜を作ります。この塗膜は一般の塗料ほどではないので、「膨れ」や「剥がれ」は殆ど起きませんが、状況や環境によっては起きる場合があります。
メリットとしては、薄い塗膜をつくるために、浸透タイプより、「隠蔽性」があるため、「濃い色」から「薄い色や明るい色」へ、塗り直すことも可能とされています。実際には無理な場合もあるのですが、状況によっては可能ですので、塗り替えの際に選択の1つとして考える事が出来ます。
DIYなどでの注意点
「木材保護塗料」の施工自体は、比較的簡単なので DIYでも出来ます。刷毛塗りだけで上手くいかない時は、ウエスで「拭き取り作業」をすれば、「刷毛塗り跡や繋ぎ跡」が出来ずに綺麗になります。
※ただし、「自然塗料や自然系塗料」などを拭き取ったウエスは、「自然発火」する可能性があります。各塗料毎の説明書をよく確認し、作業する必要があります。
使う場所が屋外
木材保護塗料(WP)認定品をオススメします。
使う場所が屋内
和信化学工業株式会社の「ガードラックアクア・ラテックス」は、室内でも使用可能な「木材保護塗料」です。アクアは半造膜タイプ、ラテックスは浸透性タイプです。
または、F☆☆☆☆(フォースター)を取得している製品や、浸透タイプの水性系をオススメします。
自然塗料は慣れていない人には塗りにくいかもしれません。また使用したウエスの「自然発火」する可能性もあるので、使用するときは注意が必要です。
木材保護塗料(WP)塗りの一例
①
画像の場合は和風住宅の増築部です。
この画像では増築部の「破風」、「桁」などに既存の木部(古い木材部)に色を合わせて塗りますが、「調色が出来ない」塗料なので「カラー同士」を混ぜて似たような色を作ります。
②
キシラデコールを1回塗りました。乾燥に最低でも1日は置き、2回目を翌日に塗ります。この手の塗料は塗り回数を重ねるほど、色が濃くなってしまうので、塗り回数に合わせた完成をみこして調色をしなければなりません。
今回はこの辺で