paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work11 モルタル外壁の塗装 その③ はじめての塗り替え

モルタル外壁 初めての塗り替え 

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前回では新築時(塗装工事1回目)での塗装の種類などを書きましたので、 

paintwork.hatenablog.com 

今回は、前回紹介した塗装へのはじめての塗り替え(塗装工事2回目)の話を書こうと思います。

塗り替え前の知識

塗り替えの前知識として、塗装してある面に再度塗装するということは、全体的な塗料の厚みが増すという事です。それぞれの工法の塗装には「意匠性」や「機能性」などあるわけですが、種類の違う塗材や工法が重なると、見た目的には問題ないように見えても、本来の性能を十分に発揮出来にくい状態になります。

・ 違う種類の模様が重なれば、本来の模様は出来にくいので美観の点でもあまり良いとは言えないと思いますし、模様を付けるという事は、より塗膜の厚みが付くという事です。

・ 塗膜の厚みが付くという事はどういうことかと言いますと、「本来の透湿性や通気性が失われやすい」という事で、「塗膜の浮き、剥がれ」が起きやすくなるという事と、「家に掛かる塗料の重量も増える」という事です。

・「透湿性」が失われると外に湿気が逃げにくくなり、家の内部に湿気がこもります。このためにカビなどの発生や結露により内部に悪影響を及ぼす恐れもあります。また、目に見えない内部の躯体などにも影響が行くかもしれません。

・ 外部からの隠蔽性や機密性などを高くすると家が呼吸できなくなってしまいます。目に見えない裏側は、断熱材やシートなどがあっても なにも保護されていない木なのですから。室内の壁などは「石膏ボードの表面にクロスを張っただけ」なので、見えない裏側に湿気が溜まる方が本当は怖いのです。

これはサイディング外壁でも同じ事です。鉄骨躯体なら結露が出来れば錆びも出ます。また、外壁の塗装にも影響がでます。

・ 昔と違い現代では防犯やプライバシーの観点からも全ての窓を開けっぱなしにして、換気を良くするような事は少ないかと思います。ちょっと大げさかもしれませんが「すきま風」が出入りするような家の方が躯体や外壁にとっては良い家なのかもしれません。

・ そのような考えを持っている私は、「遮熱塗料」や「断熱塗料」などに、「疑問を感じる」時もあります。「遮熱塗料」や「断熱塗料」などについては また別の機会にでも書こうかと思います。

・ 今までは下塗り・中塗り材などに「微弾性フィラー」という材料を 使用するのが流行りでしたが最近では「微弾性」ではないフィラーもいい製品がでているので塗り替えする「旧塗膜」にあわせた 下塗り・中塗り材を選択する必要があります。

旧塗膜別の塗り替え 

それでは旧塗膜別の塗り替えについて書いてみたいと思います。塗り替え時の目安として頂ければと思います。

旧塗膜がリシンの場合

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比較的、色々な種類の塗装が施工できます。寒水石やサンドなどの骨材入りの塗料ですので表面が粗く、塗料の吸い込みが多いです。古い塗膜の場合は表面の骨材がポロポロ落ちやすいので、高圧洗浄やケレン作業などである程度落とし、シーラーで下地をしっかりと固める必要があります。

一般的な塗り替え施工例

・ 艶消し上塗り材での塗装や、ローラーリシンなどの上塗り(ローラー仕上げ)

例)シーラー → 任意の上塗り材2回塗り

(艶ありタイプの上塗りの場合は、上塗り塗料の吸い込み防止に   フィラーなどの中塗りを必用とする場合もあります)(塗り替えコストを安く抑えることができます)

・ 単層弾性なみがた模様仕上げ(ローラー仕上げ)

例)シーラー → 単層弾性平滑塗り→単層弾性模様仕上げ

 (塗り替えコストを安く抑えることができます)

・ 微弾性フィラーなみがた模様仕上げ(ローラー仕上げ)

例)シーラー → 微弾性フィラーなみがた模様つけ → 各種対応上塗り2回

・ 硬質性フィラーなみがた模様仕上げ(ローラー仕上げ)

例)シーラー → 硬質性フィラーなみがた模様付け → 各種対応上塗り2回

×塗り替えに向いていない施工例

・ リシン(吹き付け仕上げ)

リシンの上にリシンを塗装するのは、骨材が付着し過ぎになり美観も損なわれ、雨水などを吸い込みやすくなります。元の状態(リシン模様)を維持したい場合は、防カビや防藻材の入った「つや消しの各種対応上塗り材」を塗り、仕上げます。

・ スキン(吹き付け仕上げ)

スキンの種類にもよりますが、リシンの表面にある骨材が大きい物だと、リシンの表面にある粗い骨材模様を埋める事が出来ません。無理に埋めるように塗布すると塗料が厚くつきすぎて、「塗膜の割れ」の原因になります。

施工自体は可能ですが、スキン本来の模様とは違う模様になってしまう可能性があります。リシンの表面にある骨材が小さいものなら可能です。

・ 吹き付けタイル (吹き付け仕上げ)

リシンの表面にある骨材が小さいものなら可能ですが、吹き付けタイル本来の模様とは違う模様になってしまいます。骨材が大きい物なら骨材のせいで付着性も悪く剥がれの原因になりやすいです。「専用下地調整材」などを使用すれば可能になりますが、コストも高くなります。

・ スタッコ (吹き付け仕上げ)

スタッコ独自の塗料の目の粗さや模様などでホコリなどがたまりやすく結果、汚れるのも早いです。上にあげた他の吹付け塗装と同じ理由から向いていないと思います。

・ 艶ありの上塗り塗材系(ローラー施工)

旧塗膜がリシンの場合は塗料の吸い込みがかなりありますので、「シーラー下塗り → 艶あり塗料上塗り2回」仕上げでは、塗料がムラムラになりがちで、綺麗な仕上がりにはなりにくいです。

従って、フィラー(硬質・微弾性など)などで塗料の吸い込みを抑えるような、上塗りが出来る下地を作るようにしなければいけませんが、リシンの上に平滑に中塗りをした場合、リシンの骨材もある程度埋まってしまうので何か 「のっぺり」としてしまい、見た目が変です。

ですので、上であげた「一般的な塗り替え施工例」で、「フィラーなみがた模様付け → 各種対応上塗り2回」のような施工法にするのがいいのではないかと思います。

・ その他 装飾仕上げ塗材系

例)シーラー → 専用下地補修材コテ塗り → シーラー → 装飾仕上げ(吹き付け・コテ塗りなど)

使う材料や施工したい模様によっては下地改善処理が必要になる場合があり、コスト的にも高額な部類になると思います。

※単層弾性なみがた模様仕上げでの2工程目で「平滑塗り」と書きましたが、メーカーカタログなどでは2工程目に「模様仕上げ」、3工程目で「上塗り」として、「平滑塗り」と記載していますし、それを実行している業者も多いです。(平滑塗りというのはウールローラーによる施工法です)

私の見解では単層弾性塗料は上塗り材であるため、2工程目で模様付けを行うと模様の痩せが多くみられます。「塗料の下地への吸い込み度」と「骨材の粗さ」による原因で、模様の痩せがみられると判断しています。

リシンなどの旧塗膜などの場合は表面に骨材の荒さがありますので2工程目に「模様仕上げ」をすると「模様のやせ」が発生しやすく、粗い骨材の上から厚みを付けて模様付けを行うと乾燥時にピンホールなども引き起こしやすくなります。

先に「主剤平滑塗り」をし「下地への塗料の吸い込みを抑え」、かつ表面の「骨材の粗さ」を少しでもなだらかにすることにより「模様の付き」を良くし、ピンホールなどの発生も抑止する事が出来ると考えています。

ですので、単層弾性の場合に限り、先に「平滑塗り」をし、仕上げとして「模様仕上げ」をすることにより、「肉もち感」のある仕上げになると考えています。

※微弾性フィラーは本来、フィラーとシーラーの機能を兼ねていますので、 下地の種類や状態によってはシーラーは必要ないのですが、 下地や旧塗膜の種類や状態によってはシーラーを塗布しないといけません。

旧塗膜が吹き付けタイルの場合

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玉状の模様を付けた仕上げですので、(凸抑え模様もあります)他の模様を付ける仕様の塗装は向いていません。

一般的な塗り替え施工例

・例)シーラー→各種対応上塗り2回 (ローラー仕上げ)

・例)シーラー → フィラー平滑塗り→各種対応上塗り2回(ローラー仕上げ)

×塗り替えに向いていない施工例

・ 各種模様仕上げ

・ リシン、スキン、スタッコなどの骨材入り模様仕上げ

・ その他 装飾仕上げ塗材系

例)シーラー → 専用下地補修材コテ塗り → シーラー → 装飾仕上げ(吹き付け・コテ塗りなど)

使う材料や施工したい模様によっては下地改善処理が必要になる場合があり、コスト的にも高額な部類になると思います。

旧塗膜がスタッコの場合 

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(画像元:エスケー化研株式会社)

吹き付けタイルのような模様で、リシンのように骨材も入っている仕上げで下地の凸凹が粗い目ですので、他の模様を付ける仕様の塗装は向いていません。また、弾力性の高い弾性塗材や厚膜系の塗材を 塗装すると塗膜が膨れる危険性があります。

一般的な塗り替え施工例

・例)シーラー→専用下地調整材平滑塗り→各種対応上塗り2回(ローラー仕上げ)

×塗り替えに向いていない施工例

・ 吹き付けタイルや微弾性なみがた模様などの各種模様仕上げ

・ 弾力性の高い弾性塗材や厚膜系の塗材

・ リシン、スキン、スタッコなどの骨材入り模様仕上げ

・ その他 装飾仕上げ塗材系

例)シーラー → 専用下地補修材コテ塗り → シーラー → 装飾仕上げ(吹き付け・コテ塗りなど)

使う材料や施工したい模様によっては下地改善処理が必要になる場合があり、コスト的にも高額な部類になると思います。

※「弾性スタッコ」や「意匠性を重視した弾性型塗料」などの厚膜型弾性塗材への弾性塗料や微弾性フィラーを下地に塗布するのは良くありません。膨れや剥がれの危険性が高まります。「専用下地調整材」などを使用します。

例)シーラー→専用下地調整材平滑塗り→各種対応上塗り2回(ローラー仕上げ)

旧塗膜がスキンの場合

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石状の「陶石」や「天然石」を樹脂(接着剤の役目)で固める感じですので、樹脂が劣化すると「陶石」や「天然石」の剥がれの危険性が高い塗材です。大きな石を使用している塗材は下地の凸凹が粗い目となります。反対に小さな石を使用している塗材は凹凸はそんなにありません。

塗り替えの際は特に、弾性塗料や微弾性フィラーなどの施工には注意が必要です。微弾性フィラーはシーラーレスなので、シーラーは必要ないと思っている方もいるようですが、スキンの上に塗装する際には必ず、シーラーで下地を固めなければいけません。

最近では微弾性ではないフィラーでも新しいタイプが出ているので微弾性系を使用するのに不安がある方はそちらの方をお勧めします。

また、一般的な塗り替え施工例 に「同系列のスキン」と記載しましたが、スキンの骨材が粗い場合は、リシンなどと同じ理由で向いていません。細かい目の骨材の場合は大丈夫です。

一般的な塗り替え施工例

・例)シーラー → (任意の)フィラー平滑塗り → 各種対応上塗り2回 (ローラー仕上げ)

・例)シーラー → (任意の)フィラーなみがた模様つけ → 各種対応上塗り2回(ローラー仕上げ)(全体的な塗膜が厚くなる危険性あり)

・ 同系列のスキン(全体的な塗膜が厚くなる危険性あり)

×塗り替えに向いていない施工例 

・ 各種模様仕上げ(フィラーなみがた模様は除く)

・ リシン、スタッコなどの骨材入り模様仕上げ

・ その他 装飾仕上げ塗材系

例)シーラー → 専用下地補修材コテ塗り → シーラー → 装飾仕上げ(吹き付け・コテ塗りなど)

使う材料や施工したい模様によっては下地改善処理が必要になる場合があり、コスト的にも高額な部類になると思います。

旧塗膜が弾性塗料系(単層弾性含む)の場合

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単層弾性や中塗りに微弾性フィラーを使用している場合は、「なみがた模様仕上げ(ローラー仕上げ)」になっていることが殆どです。弾性塗料は経年劣化で「硬質化」しますので、弾力がなくなり硬質化すれば使用材料などの幅が増えます。

一般的な塗り替え施工例

・例)シーラー → 各種対応上塗り2回(上塗りは弾性下地対応品)

(旧塗膜が単層・複層共)(ローラー仕上げ)

・例)シーラー → 単層弾性平滑塗り2回

(旧塗膜が単層弾性の場合)(塗り替えコストを安く抑えることができます)(ローラー仕上げ)

・ 単層弾性なみがた模様仕上げ(旧塗膜が単層弾性の場合)

例)シーラー → 単層弾性平滑塗り → 単層弾性模様仕上げ(ローラー仕上げ)

(下地のなみがた模様があまり綺麗ではない場合。)

・ 複層弾性なみがた模様仕上げ(旧塗膜が複層弾性の場合)

例)シーラー → 複層弾性模様塗り → 各種対応上塗り2回(ローラー仕上げ)

(下地のなみがた模様があまり綺麗ではない場合。)

×塗り替えに向いていない施工例

・各種対応上塗り以外の全て

※弾性塗料は年数経過と共に徐々に弾性力が失われ、硬質化します。 塗膜に弾性力があるうちは無理ですが年数が経ち硬質化すれば、施工出来る塗装もあります。

※複層型の弾性(ローラー仕上げ)に付いては一般的には、シーラー → 上塗り2回の工程が多く、上塗りにより良いグレードの塗料を使う事に比重が置かれているように感じます。

旧塗膜が装飾仕上げ塗材系

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(画像元:アイカ工業株式会社)

装飾仕上げ塗材系は種類も多く、その一つ一つの材料や工法が違いますので、簡単にまとめることが出来ませんが、テクスチャー(模様)をそのまま活かす塗装が無難であり、コストも抑えることができます。

ただし、上塗り材に高価なグレードの塗料を使用した場合は別です。機会があればその事に付いても書いてみたいと思います。

解説 

模様の違う塗装にする場合など、旧塗膜がリシン、タイル、スキンやスタッコなどの「骨材の荒さ」や適応下地などにより「向いていない」などと書きました。

昔からある工法で、「セメントフィラー」などによる下地調整材を塗布する事で、

下地の凸凹が粗い目を、滑らかな素地に近づけ、別の模様の塗装をする事を目的とした工法もあります。現在では「専用の下地調整剤」などもあります。

ですが、吹き付けやローラーでの工法では不十分で、コテ塗りなどで旧塗膜を埋めてしまう事をしなければ、「本来の模様」にはなりません。どうしても違う模様にしたい場合の選択肢としてある程度です。

滑らかな素地に近づけるには下地調整材を「コテ塗り」による平滑処理しかありません。コテ塗りによる平滑処理は「塗装工程の中の1工程増える」とは意味合いが違います。なので、「向いていない」と書きました。

それだけではありません、工程が増えるということは比例して壁の厚みも増えるという事ですので、それ以降の塗装工事の事も考えると、後々「透湿性や通気性」の悪い外壁になって行き、湿気のこもりやすい外壁になります。

コテ塗りでの平滑処理は、旧塗膜を隠蔽してしまう事ですので、極端な言い方なので語弊はありますが、塗装してあるモルタル外壁に再度、モルタルを塗るようなものなのです。

一方、「違う模様にしない」という選択はコストを抑える事も出来ますし、上塗りに使う塗料のグレードを上げるという選択も可能になります。

はじめての塗り替えで方向性(模様や施工法)を決め、後々では上塗りだけで(シーラーなどは必要ですが)済ませるのが長い目で見ると「費用」や「無駄に塗膜を付けすぎない」という点では良いのではないかと思います。

色選びについては、「サイディング編」で書いたのですが、「石調」や「意匠性」のある塗材など、一部の施工法の色選びは除きますが、基本的には同じですので張っておきます。

 

今回はこの辺で。