work50 塗料の調色 簡単な調色のやり方
塗料の調色について
今回は「塗料の調色」について書いてみたいと思います。また、DIYで 塗料を調色するのにも役にたつかもしれません。少し長い記事になってしまいましたが、「塗料の調色」を行う上で、幾つか知っておかなければならない事も書いています。
- 塗料の調色について
- 2種類の三原色
- 調色時に用意する原色
- 100円ショップの水性絵の具
- 調色前に知っておきたい4つの知識
- ベースとなる2色の混色
- 調色時の注意点
- 日塗工のレシピ
- 実際の流れ
- 調色用着色剤
色については、「カラーコディネイター」 や 「色彩コディネイター」、塗料の調色については、「調色技能士」など、各職業に分けられるほどの分野があり、普段の生活から芸術品までありとあらゆる物に関わる事なので、ペンキ屋の私が何か言えるような物でもありませんし、1記事で収まるような事柄でもありません。
私はペンキ屋ですので、今回は「建築塗料の色、調色」について書きたいと思います。
また、DIYなどで何かを作成し、「塗料を好きな色で塗りたい」けど、その色がホームセンターに売っていない時にも、役立つように、調色のちょっとした知識やコツなどを書いてみたいと思います。
2種類の三原色
色の事を調べると必ずと言っていいほど「三原色」という言葉が出てきます。それも、「光」と「色」の「2種類の三原色」です。
光の三原色
「光」なら 「赤(Rレッド」、「緑(Gグリーン」、「青(Bブルー」の3つの原色。 (テレビやPCモニターなどに使われている方式だそうです)
色の三原色
「色」なら 「青緑(Cシアン」「赤紫(Mマゼンダ」「黄(Yイエロー」の3つの原色。 (写真やプリンターなどに使われている方式だそうです)
※塗料の調色は減法混色といいまして、こちらになります。
この「3つの原色」を混色(混ぜ合わせる)事で、「ほぼ」どんな色でも作れるそうです。
と、この様な事はネットで調べると「直ぐにいくらでも」出てきますが、実際にDIYなどをやろうと思ってホームセンターや100円ショップに「ペンキを買いに」行き、「赤や青」は売っていても、「グリーン?。表の様なグリーンって黄緑なの?、どの緑なの?!。」や、「マ、マゼンダ??、シアンとか売ってないよ!!。」と、なると思います。
赤色ひとつとっても、鮮やかな赤からくすんだ赤など、何色もあります。全ての色に何色もあるので分かりにくいと思います。
つまり、その様な情報では携わっている人しか分からない事になってしまいます。ここでは調色が初めての方でも出来るだけわかりやすく書いていきたいと思います。
調色時に用意する原色
ここから今回の本題に入りたいと思います。
塗料を調色する際には、
「紺」 「赤」 「黄」 「黒」 「白」の「5色」 を原色として用意します。
なぜ、この「5色」かといいますと、基本的には「シアン(青緑)」や「マゼンダ(赤紫)」などの、極端な「鮮やかな純色」は、「塗料の場合」は無いからです。(一部、例外もありますが、理由は長くなるので省略します。)
ですので、「シアン(青緑)」の代用として、「紺」、「マゼンダ(赤紫)」の代用として「赤」を使用します。
「黒と白」以外の色(紺・赤・黄)は 鮮やかな「純色」ほどいいのですが、ホームセンターなどで普通に売っている標準的な物でも構いませんが、出来るだけ「鮮やかな色(純色に近い)」を選ぶようにしてください。
100円ショップの水性絵の具
今回は、「100円ショップで購入した水性絵の具」を使って説明したいと思います。100円ショップの「水性絵の具」なので、「鮮やかな色」や「正確な色」は出来ませんが、基本的な考えは同じなので、調色の流れとして観ていただければ助かります。
それから「メタリック」や「パール」などの部類も基本的には同じですが、塗装的技術も必要になる為、今回は割愛したいと思います。
調色前に知っておきたい4つの知識
1つ目の知識
なぜ、鮮やかな純色がいいかといいますと、例えば「赤」だと、赤に「白」を入れて(足して)行くと「ピンク」になりますが、「元の赤の鮮やか度」で、鮮やかなピンクになるのか、濁ったピンクになるのか、「分かれ道」が出来てしまいます。
塗料などの調色では基本的には「減法混色」といい、色を混ぜればまぜるほど、色が暗くなってしまう調色法です。
「白」と云う色は色を薄くする事が出来ますが、同時に「濁す」作用もある為に、赤に白を入れても思ったようなピンクにならないと云う事に繋がってしまいます。
「建築塗料の場合」、原色と言いましても 数種類しかない上に「何かしらの色が混ざっている」 物があるんですね。ですので思ったような色が出ない場合は、原色を純色に近い物を用意しないと、色が出来ません。
下の画像は「1液型弱溶剤塗料の原色見本」です。黒1色、黄色2色、赤3色、紺1色、緑1色、紫1色 と、白を合わせても「7種類・10色」しかありません。「12色セットの色鉛筆」よりもすくないです。白との混色の比率でどんな色になるかも載っていますので、調色の際の目安にもなります。
(画像元:日本ペイント株式会社)
塗料の種類や種別などによっても、「黒や白」にも他の色が混色されている物もありますし、「溶剤塗料では出来る色」でも、「水性塗料では出来ない」場合もあります。「建築用」塗料の原色は数種類しかなく少ないのですが、同じ塗料でも、「車両用」や「模型用」などは「原色が豊富」にありますので、それらを利用する手もあります。
2つ目の知識
よくネットなどではコツとして、「濃い色に薄い色を入れると塗料が増えて大変な事になるから、 薄い色に濃い色を入れていく。」などと書かれている場合がありますが、それは「まったく違います。」
正しいやり方は、「5色(原色)の中で」「何色(何色系)が一番多く配合されているか判断する」事です。
色の対比率を見極めると云う事ですね。ピンクで例えますと、「赤と白」 が基本になりますが、赤が多いピンクなのか、白が多いピンクなのか「判断」すると云う事です。要は「メインの色を見つける」と云う事なんですね。
白が多い場合なら、「白色に赤色を少しずつ足して」いけばいいし、赤が多いなら「赤色に白を少しずつ足して」いく感じです。
もちろん、素人の方ではその判断がむずかしいかもしれませんが、判断できない場合は、「棒や筆」 などに 塗料を少量付け混ぜてみれば判断出来ると思います。いきなり必要な量を混ぜたりすると失敗した時に困ってしまいますので、難しい色の場合の「試し」はプロでも行います。
3つ目の知識
塗料には色々な種類がありますが、大まかに分けると2種類で、「水性塗料」と「油性塗料」です。調色時にこの二つの種類の塗料を大まかに比べると、水性塗料は油性塗料に比べると、鮮やかな色は出来ません。
色見本帳などと見比べて色を調色する場合などは、水性塗料では鮮やかな色は出来ない場合が多いです。
4つ目の知識
塗料は種類にもより差がありますが、作った色(液体)の時に比べると、乾燥すると色が濃くなります。(私達は「色が昇る(のぼる)」)と言っています。
つまり塗料を塗った直後に 色が合っていても、乾燥すると「濃く」なってしまうので 違った色になってしまいます。
それを考慮して、少し薄めに作り試し塗りをして乾燥させ、乾燥させた状態でチェックしながら色を調色していきます。
調色に関しての知識は以上の4点を知っておけば、とりあえず大丈夫です。
ベースとなる2色の混色
次は、どの色を混ぜるとどのような色になるか組み合わせを簡単にまとめました。基本的には「1:1」の割合です。本当はそれぞれの割合を10段階くらいまで載せたいのですが、膨大になってしまうので行っていません、あくまで目安として頂ければ。
赤+黄=橙色(オレンジ)
赤+黒=チョコレート
(黄色や白を足していくとブラウン系になります)
赤+紺=紫
上の画像では紫に見えませんが、
「白」を加える事で紫だと分かり易くなります。
赤+白=ピンク
黄+黒=変な色・・・
でも紺を入れるとモスグリーンに。
黄+紺=グリーン
黄+白=レモン色
黒+紺=変な色・・・
あえて言うならミッドナイトブルー?。(藍色系にも発展?)
黒+白=グレー
紺+白=水色(白を少なくすれば青)
変な色(笑)を除くと、「8通りの組み合わせ」 でしかありません。その組み合わせの「色の任意の対比量で出来た色」に、「他の第3、第4、第5の原色」を混ぜて色をつくります。
しかし、殆どの場合は「5色目」などは混ぜる事はありません。色を追加すればするほど、「色が濁って汚くなる」からです。追加するとしても、「気持ち程度」です。
そして2色の組み合わせに「もう1色」足すと、「シアン(青緑)」や「マゼンダ(赤紫)」みたいな色も出来てしまいます。ですので組み合わせに必要な色は殆ど出来てしまうのですね。
シアン(青緑)ぽい色 (紺+白+黄。色の構成)(白>紺>黄。色の対比)
マゼンダ(赤紫)ぽい色 (赤+白+紺。色の構成)(赤>白>紺色の対比)
調色時の注意点
「調色時に注意する点」 としては、「原色に近い濃い色や明るい色鮮やかな色に対して白や黒を足す場合」は、それぞれ「白」、「黒」を入れすぎないように特に注意が必要です。
「白や黒」 は、色を 「濁らせて」 しまいますので、入りすぎた場合は、「元の彩度や明度」に戻すのに他の原色を沢山使って戻さないと濁りが取れなくなります。
「塗料が大量になってしまう」 可能性もありますので入れすぎた場合はあきらめて一から作った方がいい場合もあります。
また、「赤味が強く出た場合」は「黒で赤味を消せます」し、逆も出来ます。「黄色味が強く出た場合」は、「白や黒で黄色味を消せます」。極端に色を入れる事は出来ませんが、少しなら効果があります。しかし、入れすぎてしまうと 「濁り」 になります。
日塗工のレシピ
塗料を調色する際には比較する物があると便利です。建築塗装業界では「一般社団法人 日本塗料工業会」 が定める、「塗料用標準色」(通称:日塗工)という色見本帳が主に使われています。何かの色を調色する際に、まずは「日塗工(色見本帳)」と照らし合わせて、基本的な色の配合を知れば調色も行いやすくなります。「日塗工(色見本帳)」には「色の配合レシピ」は記載されていません。
比較的簡単に「色の配合レシピ」を知る方法などを記事にしました。
実際の流れ
と、一通りの知識やコツ的なものを書きましたが、この 「水性絵の具」を使って、「我が家の建具の色(新建材のシートの色)」を、作ってみました。画像は完成したものです。
建具や枠は、新建材の「木目柄」なので当然、「ペンキでの塗りつぶし」だと色は「合いません」。ですが、100円ショップの絵の具でも 近い色は出来ます。
まず、構成されている原色は、「黄色」「赤」「白」「黒」の4色です。
次に最初の組み合わせで作った、「赤+黄=橙色(オレンジ)」を
ベースにして、実際の色は「黄色が多いのか、赤が多いのか」を判断します。今回は 「黄色が多い」 と判断しました。
そのままでは「鮮やかなのと、色が濃いので」、「白」を使い色を「薄くし、濁します」。最後に「黒」を入れて「暗く」します。
塗料の配合比率は「黄>赤>白>黒」です。つまり、最初に 黄色を容器に入れ、次に赤、その次に白、最後に黒 となります。
メインとなる「原色」が分かれば、後はそれより少ない量を「順に入れていくだけ」なので、このやり方を知識として知っておけば、多少練習や慎重さも必要ですが、慣れれば誰でも出来るようになります。
印の範囲を 出来た色(水性絵の具)で塗ってみました。もう少し、赤味を加えた方がよさそうです。(塗りつぶしだと木目が消えてしまうのと、シートの木目が赤っぽいですので)
プロと素人の差は各色を入れる回数やチェックなどの(スピード)だけです。数ある中から色を決定する(選ぶ)のには センスが必要かもしれませんが、「色を作る」のには センスは必要ありません。
ちょっとした 知識とコツさえ知っていれば誰でも出来るのです。お気に入りの色をつくってみるのもいいかもしれませんね。
調色用着色剤
また、塗料を調色する際に、「調色用着色剤」・「現場用着色剤」と呼ばれるものがあります。塗料の調色は本来、「塗料同士」で行うものですが、「塗料をベース」に「着色剤」を入れて調色するために使うアイテムです。(各塗料メーカーから色々な商品が出ています。)
利点は、原色塗料を複数購入するよりもコストがかからない事や、小さなアイテムなので塗料缶などと比べて保管場所にあまり困らない事などです。塗料(ペンキ)に対しての調色はもちろん、木製品の着色剤(ステイン)としても利用したり、DIYなどでは重宝するアイテムだと思います。
注意点としては、塗料に添加出来る量に上限があります。(どのメーカーの商品でもおおよそ3%~5%くらいです)
木製品の着色剤(ステイン)として、クリヤー仕上げをする場合は、あまり気にしなくても大丈夫です。 各メーカーから色々と「調色用着色剤」・「現場用着色剤」は、ありますので、気になる方は検索してみてください。
今回はこの辺で。