paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work 57 折半屋根 ボルトキャップ

 

前置き

以前、「屋根の塗装 金属屋根編」という記事を書きました。

paintwork.hatenablog.com

この記事の中で「折半屋根」の事も書きました。折半屋根の項目で「ボルトキャップ」についても私的に書きましたが、私的見解では 「被せない方がいい派」とも書きました。

ですが、それは「折半屋根」についての事です。ボルトキャップの主な役割として、

ボルトが錆びない、雨水が流入しない様にする事なのですが、ボルトキャップを被せることによって、ボルトの状態が視認できなくなるのと、劣化したときに綺麗に撤去(コーキングなども含めて)するのがとても大変な作業になります。ですのでコストもそれなりにかかります。

ボルトが錆ると、酷い場合は穴があくでしょうし、雨漏りなどもあるかもしれません。ボルト部は大事な部分なので視認性を良くし、定期的にメンテナンスした方がいいという、私の見解は今も変わりません。 

8年前の施工

下の画像は8年ほど前に私が実際に施工したボルトキャップの一部です。確認用に余ったボルトキャップを倉庫に保存していました。

ボルトキャップ自体は「サビヤーズ」という商品で、メジャーな商品です。倉庫なので室内扱いですが8年ほど経過した現在でも「新品同様」です。

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施工時の工程

実際に施工した方の現在の画像を説明の下に載せます。

施工時はボルトのサビがまだあまり出ていなかったので軽くサビを落とし、2液型の変性エポキシ錆止めを3回塗布しました。その後に、ポルトキャップの内側に「変性シリコンコーキング」を注入してからボルトへ被せています。

なぜ、「変性シリコンコーキング」なのかといいますと、「シリコンコーキング」の方が「変性シリコンコーキング」よりも野外での耐久性はありますが、塗料への密着がとても悪く、以降に塗装作業があった場合は、そのまま塗料を塗っても「塗料をはじく」ので、将来、折半屋根を塗装することになった時に「シリコンコーキング」だと、塗料との密着が悪いからです。

「ウレタンコーキング」という種類のコーキングもあり、「変性シリコンコーキング」よりも塗料との密着はよいのですが、紫外線に弱く塗装でカバーしなければならないそうです。ですので、塗料を塗る前提ではない今回は「変性シリコンコーキング」を使用しています。

「シリコンコーキング」の上から塗装する場合は「シリコーンシーラント塗装用下地処理剤」などの (塗料のはじき止め材です)塗料への密着をよくする「プライマー系」を塗布してから塗料を塗りますが、それでもあまり密着はよくありません。以上の理由から「変性シリコンコーキング」を使用しています。

それから、本来は雨水流入をより良く防ぐために、キャップを被せた後、外周にもコーキングをするべきなのですが、「変性シリコンコーキング」も そのままだと、「ウレタンコーキング」よりは強いものの、「シリコンコーキング」よりは「紫外線」に弱いので、適度な厚みがないとひび割れなどを起こす可能性があるので、変性シリコンコーキングを露出させないように外周にはコーキング処理を行っていません。その代わり ボルトキャップの内部全てにいきわたるようにコーキングを充填しています。 

現在の状況

劣化が激しいです。表面がボロボロな感じです。

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こちらは 先端が折れてしまってボルトの頭が露出し錆びています、飛来物が当たって折れてしまったのかもしれません。

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先端が折れてしまっているのは別としても、割れなどが生じていなくても、樹脂部の劣化が酷いのでボルトキャップの状態がいいとは言えません。

私的見解 

結論からいいますと、野外ではボルトキャップは10年は もたない気がします。もちろん、建物の立地条件や環境でも変わると思います。ですが、現場は至って普通の市街地の建物で過酷な環境でもなく一般的環境です。

折半屋根自体はメッキ鋼板で良好な状態でしたので塗装はしませんでしたが、施工されて現在まで20年以上経つ建物です。折半部の山の部分は全くサビは無く、谷の部分に薄っすらとサビが出ています。

メッキ鋼板の場合は、状態がいいほど 塗料との密着が悪いので、塗装の適正時期を判断するのは 難しいです。

もちろん密着を良くするプライマーなどがありますし、エポキシ系のプライマーや錆止めなどはメッキにも密着するとあります。

ですが、私の経験上 過去に塗料の剥がれや浮きなどのトラブルもありましたので、メッキ部が綺麗な場合は無理に塗装する必要はないかと思います。もちろんずっと塗装しなくていいわけでもないので、状況を見て塗装した方がいいです。

鋼板で言えば 最近流行りのガルバリウム鋼板などもそうですし、色々なその他の部材全てが、生産側では「塗装して長く持たせる事」など考えて生産をしている訳ではないと思いますので、(悪くなれば張り替える、取り替える。生産側では当然の考えだと思います)

テレビなどの家電品など、ある程度使用して壊れたり古くなれば 修理などせずに新しく買い替えるのと同じで、物によっては塗装して長くもたせるよりも 新しくやり替えた方がコスパが良い時もあります。

塗装屋の私がいうのも変ですが、塗装してもあまり意味がなく、新しくやり替えた方がいい場合も多々ありますが、予算や諸事情も含めてお互いが納得できるまで相談する事が大事だと思います。

画像のように20年以上経過した屋根で、サビもあまり出ていないようなケースでは、

サビが薄っすらと出てきた今かもしれませんし、もしかすると錆の進行が遅く、あと10年くらいは何もしなくても良いのかもしれません。

このケースの場合は、折半部よりも ボルトとナットの方が気を付けなければいけないポイントかもしれません。

ボルトキャップの話に戻しますが、仮に塗装する折半屋根の場合、次の塗装サイクルを10年後と仮定すると、10年持たないボルトキャップではサイクルが狂ってしまうので、ボルトキャップは必要ない気がしますし、画像の様に塗装しない(8年前の)折半屋根なら、尚更メンテナンス時に視認性が悪いので必要ない気もします。(この現場の場合は大人の事情で施工致しました)

従って、折半屋根のボルトやナットは定期的にメンテナンス(視認だけでも)するのであればボルトキャップは必要ないかと思います。

ボルトキャップの優れている所

あくまでも私個人の一般的な折半屋根のボルトキャップについての見解ですので、ボルトキャップを否定しているわけではありません。

きちんと施工すれば 効果はありますので状況や環境など、メンテなどやりにくい場所や場合などは、一定の期間は何もしなくていいので状況次第だと思います。一個当たりの単価なども考えると、良い製品なのは間違いありません。

プランターなどのプラスチック製品を野外に置いておくと2~3年くらいでボロボロになったりするのと比べると屋根の上での過酷な環境での耐久性は抜群にいいと思います。

 例えば、スレート屋根などの場合は最後まで無塗装が多いのですが、(主に倉庫や車庫など)そういう場合はメンテなどもおろそかになりがちです。そういう場合ではボルトも錆びやすく、パッキンなども傷んでしまい雨漏りなどが起きやすいです。

塗装などはしない方向性であれば、コーキングに耐久性の高い「シリコーンコーキング」なども使用できますし、ボルトキャップを適正に施工すれば かなり効果はあるのではないかと思います。

 

 

 

今回はこのへんで。