paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work31 外壁の塗装 良くない例その② 塀編

外壁の塗装 良くない例 塀編

以前、過去記事で 事例と理由などを紹介しましたが、 

paintwork.hatenablog.com 

前回に引き続き、今回も塗装工事の良くない例を紹介したいと思います。

 

過去の工事写真を見ていたら「簡単で分かりやすい写真」を発見したので画像を例に取って紹介したいと思います。

経緯

この写真は数年前の事例ですが状況はというと、ある工務店さんの仕事で、他の同業者が塗装したものです。お客様の報告にて、塗装の「剥がれが」発覚しましたが、工務店さんの依頼で私が調査に行ったときに撮影した物です。

なぜ私が調査に行ったかというと、本来なら施工した業者が直すのが筋なのですが、その施工した業者に工務店さんがかなりお怒りになり、「直す」にしてもその業者はもう使いたくないという理由からです。私としても、他人(他業者)の失敗を直すなどやりたくはなかったのですが、普段からお世話になっている工務店さんなのでお引き受けしました。と、いう経緯です。

状況 

調査に行くとお客様からは当然、「なんで新しく塗装したのに数ヶ月でこんな風になるの?」と、聞かれます。このお宅は塀だけではなく、家全体(外壁)の塗装工事もしています。もちろん、塀を塗装した業者と同じ業者です。

一箇所でも大きな悪い点が出ると(この場合は塀でしたが)、その他(家)の部分もそうなるんじゃないかと思ってしまいます(当然ですよね)。

「施工が悪いからですね」と、言うのはとても簡単なのですが、それを言ってしまうと工務店さんの信用が無くなってしまいますので、絶対に言えません、大人の事情ってやつです。その時はあたりさわりのない説明をして、しっかり直しましたが、その時言えなかった、施工の悪い点などをあげて問題を解決したいと思います。

前置きとして

・画像は「壁」ではありません。「塀」です。

・画像は塀の内側ですが、外側にも剥がれが発生しています。

・この塀はブロックで作製されています。(一般的に塀は、ブロック、もしくはコンクリートで作られています)

・旧塗膜は「スキン」で塗装されており、現塗膜は「単層弾性なみがた模様」です。

・塗装されてから数ヶ月で「剥離」しています。

・塀に弾性塗料を塗る場合は「膨れ」などのトラブルが起き易いです。(理由と対策などは後で説明します

トラブルの発生する状況

 凄く大事な事なので最初に書きますが、笑わないで読んでくださいね。※

まず、

① 「雨」が降ります。

② すると上になった面、この場合は笠木(かさぎ)や地面に水が溜まります。

③ 笠木や地面に溜まった水は吸い込まれていきます。

④ 笠木の場合は「塀の中へ」、地面の場合は「地中へ」。

⑤ 天気になります。

⑥ 天気になると、水分が上に蒸発していきます。

⑦ と、同時に物の中を通る時(塀や壁など)横方向にも蒸発しようとします。

⑧ その時に水分の逃げ道が無ければ塗料(塗膜)を押し上げます(膨れや剥がれ)

と、これらが「基本的」な考え方です。

そこで「透湿性」が大事になってきます。

※雨が降らなくても湿度が高い場所や、地中などは元から水分を含んでいますので、透湿性」は大事な事柄なのです。弾性塗料は模様を付けると厚みがつくので一般の上塗り材と比べると「透湿性」は悪いです。しかし模様をつけない塗装だと(平滑塗り)、表面がのっぺりして見た目も良くない為、模様付けなどで塗装しますが、その時は「湿気の逃げ道」がある事が前提になります。

画像で説明 

まずは写真を見てみましょう。この写真で分かる事は、新しく塗った「単層弾性塗料」は剥げているのに、「旧塗膜」である「スキン」はまったく「剥がれていない」状態です。つまり、今回塗装した塗膜が旧塗膜に「密着していない」事が見て取れます。

旧塗膜は「スキン」ですが、汚れ、クラックなど見て取れますが、旧塗膜の状態自体はさほど悪くはありません。

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各部位の説明

画像で各部位を説明しますとこうなります。

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それでは各部位を上から順におって説明したいと思います。 

笠木

① まずは「笠木(かさぎ)」から。

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「笠木」は被せて仕上げる物の総称です。デザインと荒隠しのためのものです。塀やベランダなどの手すり周りなど色々な所に使われていますが、モルタルや金属製、レンガ系など色々な素材を利用して作られています。

写真の様なブロック製の塀などはモルタルを塗って成形しますので、そのままモルタルで笠木を成形していると思われます。

この場合は、新規作成の時に左官さんが、「金コテ仕上げ」と言って、表面のモルタルをツルツルピカピカにして仕上げているはずですが、「経年劣化」のため、表面がガサガサになり、「水分を吸いやすい状況」になっています。

金コテ仕上げは、表面がツルツルピカピカですので、雨水などの水分を吸い難く、モルタル面なので水分の蒸発も妨げません。ですが、経年劣化すると表面がガサガサになりモルタルの砂地が現れますと、水分が非常に吸い込みやすくなってしまい、天気などによる蒸発では乾燥するのにとても時間が掛かる水分を含んでしまう可能性が出てきます。

この塀には笠木にクラックがあります 。笠木の劣化だけではそこまで心配する必要もありませんが、クラックが出来ている場合はそこから雨水などが流入しやすいので注意がひつようです。(塗装しない場合でもコーキング処理くらいは行った方がいいです。)

塗装なしのブロック塀など、雨が降った翌日に天気がよくても、なかなか塀が乾かない、湿気ているなど、見た事があると思います。この乾く時間が蒸発の時間なので、乾く時間が遅くなれば塗装にも影響が出ます。

旧塗膜 

②  旧塗膜(スキン)

work11 外壁の塗装 モルタル壁編その③で、各種旧塗膜への塗装の事を紹介しています。

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下地の「スキン」は汚れやクラック(ひび割れ)は見て取れますが、塗膜自体はそんなに傷んでいないようです。写真ではわかりづらいですが、近くで確認してみると、新しく塗装を行う時に「シーラー(下塗り材)」を塗った形跡はありませんでした。これでは塗装が剥げるのは当たり前です。

スキンの上に再塗装する時は必ずシーラーを塗り、下地固めプラス、上に塗る塗料との密着性を良くする必要があります。要はスキン下地の場合は、シーラーを塗らないで塗料を塗ると言う事は砂場の砂の上に塗装するみたいな感じです。(厳密には違いますが。)

旧塗膜の「スキン」が剥げていないのは、この時の施工が「正しく行われていた」と、思われます。簡単に言いますと、スキンは「石」を「ボンド」で固めた塗装ですので、ボンドが劣化すれば「石」が当然剥げてきますし、このような状態(笠木などの劣化)であっても、スキンの「塗膜の浮きや剥がれ」が見られないので、下地のモルタルとの密着も問題ないようです。

クラック 

③ クラック(ひび割れ)

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画像で見て取れる程の大きさのクラックの場合、「Vカット」、「Uカット」 と呼ばれる動力工具を使う方法でひび割れ部を削り、コーキング処理をし、その上から補修用フィラーなどで補修し、旧塗膜である「スキン」を「肌合わせ」として吹付けする必要がありますが、(補修の大きさや後から塗装する模様にもよりますので、吹付けせずにローラーや刷毛などで模様付けをする時もあります)

大人の事情でそれらが出来ない時でも必要最低限の処理として、手工具などである程度クラック部を削り、コーキング処理をする事が必要です。画像で見る限り(実際確認した時も)コーキングさえしている形跡がありませんでした。この状態のまま塗装した場合はひび割れからも湿気が放出しようとするので、ひび割れの部分からも塗膜を押し上げる力が掛かってしまいます。

剥げた塗装

④ 単層弾性なみがた模様塗り

結果論ですが、「スキン」の上に塗装する場合は、単層弾性よりも透湿性のある微弾性フィーラーで模様付け塗装した方が、良かったかと思います。ですが、「シーラー」を塗っていない、「クラックの補修」をしていない。では、どんな塗装をしても同じ結果になると思われます。

巾木 

⑤ 巾木(はばき) 

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ここは塗装していなかったので問題なしです。画像を見れば分かるとおり、塗料の剥げている部分は上の方(笠木の近く)です。幅木近く(下の方)が剥がれていなかったのは、幅木が正常に機能し、湿気を逃がしていたからだと思われます。

どちらにせよ、シーラーを塗っていないので密着は良くないですので、早かれ遅かれ、剥げる事にはなると思います。塗り直しの際に剥がしましたが、やはり密着はしていませんでした。

外部での幅木の意味は「湿気を逃がす」という意味で設けられています。家などの建物などでは「基礎幅木」といい、地面から40~50㎝ほど塗装していない面、モルタルで仕上げられた面があります。(他の仕上げでは洗い出しなどあります)

地面(地中)からや基礎からの湿気を逃がす為にモルタルなどで仕上げ、蒸発しようとする湿気を幅木から逃がすという考えです。(通気口や床下換気扇などを取り付けている家もあります)なるべく内部に湿気を篭らせない、行かせないという目的ですね。ですので塗装は行わないのが普通ですし、塗ると良くないです。

最近では基礎幅木に塗装できる専用の塗料も出てきましたが、実績(試験ではなく実年数)がありませんのでなんとも言えません。ですが、モルタル部の劣化がひどい場合や細いひび割れなどある場合の簡易的な補修作業としてはいいと思います。キチンと直すならやはり、左官さんにやってもらうのが正解ですね。

トラブルの原因

と、一通りの状況分析をして、塗装の剥がれた原因を簡単に説明したいと思います。

① シーラー(下塗り材)を塗っていない。

② クラック処理をしていない。

③ 笠木に関してはクラック処理を行えば現状では塗る塗らないは何とも言えない。

④ 単層弾性を塗っていた。

この4つが剥がれに関しての大きな原因だと考えられます。

①は、密着性がない事です。

②は、せめてコーキング処理くらいはするべきです

③は、笠木が劣化している為、内部に湿気が溜まりやすい。また、劣化している為水分の蒸発も早いはずだが、内部に溜まる(篭る)湿気の方が多い。なので、塗装して水分の吸い込みを抑えた方が効果が期待できる。笠木に関しては、塗装することで湿気の逃げる場所がなくなるため、塗装しないという考えもあります

④は、水分が逃げる際に透湿性の良いとはいえない塗料(単層弾性)を塗っていた為、塗膜が押し出され剥げたと考えられます。

塀の表面、天場面(笠木)、裏面、巾木面と、全ての面を塗装している塀も膨れなどの危険性が高まります。以前にも書きましたが、全てをラップで包むようには塗装出来ません。この場合はブロックの底面である部分が地面と直結していますので、(建物でもそうです)その面からの湿気の逃げに対して「逃がす所」がなくなってしまうため、塗料への負担が掛かります。

この場合にかかわらず、つねに塗装面には裏側からの負担が掛かっています。ですのでシーラーなど密着性の高い下塗り材などを塗り、その様な事柄から「耐えて」いるのです。耐える力が負けてしまえば「膨れ」や「剥がれ」に繋がってしまいますので、塗る場所により、適材を選択、正しい施工が大事になってきます。

と、なんだかとても長くなってしまいましたが、この時は手作業で「単層弾性塗料」を剥がし、(密着していなかったので、わりと簡単に大部分を剥がす事が出来ました。)きちんと補修を行い再塗装して完了しました。数年前に行いましたが、現在もトラブルは起きていないようです。完成後の写真がなかったのでアップ出来ないのは残念ですが、今回はこの辺で。

おまけ。

外部に物を付けるときは(このようなポストや換気フードや色々な物)、雨水流入防止の為にコーキングなどを行いますが、底面になる部分は行いません。何かの理由で雨水が流入しても底面の隙間から逃がすという考えです。

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 今回はこの辺で。