paint work’s 塗装工事に関する blog

建築塗装をはじめとした 色々な塗装工事についてのブログです

work33 DIY 缶スプレーの使い方

缶スプレーについて

DIYなどで色を塗りたいときに利用する方法として、刷毛やローラー、吹き付けなどで色を塗るわけですが、吹き付けの場合だと「缶スプレー」が一般的だと思います。

私のようなペンキ屋であれば吹き付けの必要機材などは所持していますが、一般の方などは当然所持していないと思います。そこで「缶スプレー」を利用せざるをえないと思いますが、慣れない方ですと、意外につかいこなすのが難しいかもしれません。

今回はそんな「缶スプレー」についてのちょっとしたコツや使い方など、簡単に書いて行きたいと思います。慣れれば、「缶スプレー」でもプロ並な仕上げも出来ると思います。

※ 缶スプレーは 火気の近くでは絶対に使用しないでください。缶スプレーを屋内で使用するときは、室内の換気を十分に取り、場合によっては保護マスクなどを使用してください。また、使用済みの缶スプレーを捨てる際も正しいやり方で捨ててください。「一般社団法人 日本塗料工業会」のHPにて参考になる捨て方が掲載されています。

JPMA:スプレー塗料を捨てる時の適正処理方法

缶スプレーの特徴

通常、塗料は希釈材で「希釈」して使います。(例外として無希釈材料もあります。)水性なら「水」、ラッカーなら「ラッカーシンナー」、ウレタンなら「ウレタンシンナー」と、種類別の希釈材を使い希釈します。刷毛、ローラー、吹き付けなど、方法によっても希釈率が違います。

「缶スプレー」の場合はそれ自体が完成品なので希釈しません。

この「希釈」というのは割と重要で、季節による温度や湿度の変化によってそれぞれに合わせた希釈を行い塗装作業を行います。ですので缶スプレーの塗装ではその時々の季節によって作業性や仕上がりが変わりやすいです。

メリットとしては「そのまま使用できる」事ですが、注意点としては、「エアーの調整が出来ない」、「吐出量」の調整が出来ない、 「パターン(吹き付け時の塗料の幅)の調整が出来ない」、「噴出しノズルの口径を選べない」 などなどあります

色に関しても調色が出来ないので、バリエーションの中から選ぶしかないです。

なのですが、下地をきちんと作り、吹付した後の処理(磨き作業なども含めて)など、吹き方を含め、コツさえ覚えれば綺麗に仕上げることができます。

ただし、機材とか缶とかの問題ではなく、単純にプロが使う塗料と缶スプレーの塗料では、コストがまったく違いますので耐久性や塗膜の質感など、どうしようもない部分はあります。

缶スプレーを選ぶポイント 

慣れていない人が缶スプレーを使用する際に「ポイント」になるのは、「吹き付けノズルのパターン」だと思います。

缶スプレーの「吹き付けノズルのパターン」は主に2種類です。「丸パターン」タイプと、「楕円(だえん)パターン」タイプです。 

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慣れていない場合は、缶スプレーを購入する際は吹き付けノズルの「パターン」が、「楕円(だえん)パターン」タイプを購入した方がいいと思います。

理由は「丸タイプ」だと、塗装時に一点に吹き付けが集中しやすいため、 吹き付けに慣れていない場合だと、塗料の「たれ」や「ムラ」が出来やすく、 上手く塗るのが難しいと思います。

車用の缶スプレーなどは通常の缶スプレーよりもスプレーの霧が細かく感じますし、吹き付けパターンも殆どが楕円タイプです。カラーも豊富ですので通常の缶スプレーよりも少し割高になってしまいますがオススメです。 

缶スプレーの種類

缶スプレーの種類としては殆ど仕組み自体は同じです。中に入っている塗料をガスの力で霧状に吹き飛ばします。中に入っている塗料の種類の違いで各種類毎に分けられます。

・水性塗料

・ラッカー塗料

・ウレタン塗料(水性、油性ともに有。)

・油性(アクリル)。(100円ショップなどの商品に多いです、自動車用の缶スプレーもアクリルが多いです。)

 

この4種類が一般的かと思います。

ただ「油性」とだけ表示してある商品は「アクリル系」が多いです。(ラッカー系ではありません)

この中で注意したいのが「ウレタン塗料」です。ウレタン塗料には「水性」、「油性(溶剤)」ともにあるのですが、「油性(溶剤)」の場合は「2液型」と呼ばれる物が主流です。(1液型もあります)

「主剤(ウレタン塗料)」と「硬化剤」と呼ばれる2種類の材料を混ぜて、1つの塗料とする方法ですが、「缶スプレー」のウレタンでは、缶の中に硬化剤をセットしてあり、任意のタイミングで混合するタイプがほとんどです。一度、主剤(ウレタン)と硬化剤を混合すると、その日の内に使いきらないと硬化して塗料がダメになります。

ウレタン塗料は基本的には「1液」タイプよりも「2液」タイプの方が、耐久性や艶などが優れている塗料が多いですし、水性より油性(溶剤)の方が、耐久性や艶などが優れていますが、通常のアクリルやラッカーなどの缶スプレーよりも高価ですし、塗料を混合した場合は使いきらないとダメになってしまうので、計画をもって使用する事をお勧めします。

溶剤の強さについて 

各塗料にはやってはいけない組み合わせがあります。簡単に言うと「水性」の上に「ラッカー」などの強い溶剤系の塗料を塗ると、先に塗っていた「水性」塗料が溶けてしまいます。ひどい時には塗り面が「しわしわ」になったりします。こうなると面倒で、塗料を全て取ってしまうか、完全に乾燥させて、全てを研磨して平らにする必要が出てきます。

強い順に並べると(耐久性という意味ではありません)、

① ラッカー

② ウレタン

③ 油性(アクリル)

④ 水性(水性ウレタンも含みます)

ですので塗料の知識や施工技術が不安な方は「同じ種類の塗料」で仕上げまでやる方が失敗が少ないです。

缶スプレー塗料の相関表

(水性ウレタンは「水性」、油性ウレタンは「ウレタン」表記)

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表を見てもらえばわかると思いますが、ラッカー塗料の上にウレタン塗料を塗ってもOKですので(缶スプレーの場合。)、お手軽に綺麗な仕上がりを考えた場合は、

カラー(色)をラッカーで塗装 → 仕上げにウレタンクリヤーなどで行うと、磨き作業なども省けるのでいいと思います。

木部などの着色クリヤー仕上げの塗装例

例1)①着色剤 → ②水性サンディングシーラー → ③水性ウレタン=〇

例2)①着色剤 → ②水性サンディングシーラー → 油性=×

②の水性サンディングシーラー工程をしなかった場合はどれでも=〇

 

例1)①着色剤→②油性サンディングシーラー→③水性ウレタン=〇

例2)①着色剤→②油性サンディングシーラー→③油性ウレタン=〇

例3)①着色剤→②油性サンディングシーラー→③ラッカークリヤー=△

②の油性サンディングシーラー工程をしなかった場合はどれでも=〇 

塗料の乾燥について

普通に塗料を塗る際にも気をつけなければいけない点で、「乾燥」が挙げられます。塗料には各種類毎に、乾燥時間が違います。

乾燥が速い順に挙げますと、

① ラッカー塗料

② 油性(アクリル)塗料、

③ 水性塗料

④ ウレタン塗料

なのですが、ラッカー塗料以外の塗料はその時の状況(温度や湿度)で 順位が変わりやすいです。(季節などで温度や湿度もかわります。)

乾燥の速さによって、 吹き方(厚く吹いたり、薄く吹いたり)も変える場合もありますし、 艶を出すような吹き方も変わってきます。

塗料を乾燥させる時は、自動車などの工業塗装などでは遠赤外線ヒーターなどを使用して、塗膜の中から乾燥させる方法もありますが、DIYでは自然乾燥などが普通なので、屋外などの作業では塗装表面から乾くので、「ラッカー塗料」などの、乾燥が速いタイプの塗料を塗る時は「厚塗り」をすると先に表面が乾いてしまう為、塗料の中が乾きにくくなったり、硬化不良という状態を引き起こします。

こうなると次の工程が進めにくくなったり、塗料を全て取り除いたりしなければならなくなります。ですので厚く塗りたい時は、最後の仕上げでやるといいと思います。

大なり小なり、塗料は乾燥すると希釈材が蒸発するので、塗料が「痩せます」。塗装直後と乾燥後では艶も見た目の肉厚感も変わります。ラッカー塗料は乾燥後の痩せが一番多いです。ですので「無理に厚く」吹いてもあまり意味はありませんし、表面だけが先に乾き「硬化不良」などの、トラブルや失敗にも繋がります。

また、塗料が完全に乾燥しないうちに、次の吹きつけなどを「厚く」行うと、「表面に泡(ラッカー以外でもなります)」が出たり します。

 

※クリヤーなどをスプレーした後に「泡」などが出て、困っている方も意外と多いみたいです。泡の原因は色々ありますが、厚塗りが原因な事が多いです。艶感を出したいがために厚塗りをしてしまい、表面から先に乾いてしまって中の希釈剤が蒸発する時に泡が出たりする事が多いです。

日中の屋外での塗装時になりやすいので、塗装表面の急激な乾燥を防ぐために、屋外で行うときは日光を直接受けない日陰か、屋根がある(日差しを遮ることが出来る)場所で行ってみてください。改善されるかもしれません。

艶と塗装表面について

塗料には元々、「艶あり」や「艶消し」など塗料の艶がありますが、フラットベース(艶消し材)などを加えて、ある程度は自由に艶を変化させる事が出来ます。

缶スプレーでは、当然そのような事は出来ないので、購入時に「艶あり」や「艶消し(マット)」を選ぶ訳ですが、吹き付けのやり方次第でも「艶」が変わります。軽く、「パッ、パッ」と吹けば艶は出ませんし、塗料が垂れるまで吹けば艶はでます。

それは、スプレーの粒子の大きさにも関係があるのですが、パッ、パッと吹けば粒子の粒粒がバラバラについてしまうので、表面が「凹凸」になってしまい、何回塗装しても反射があまりなく、艶があまりでません。

逆に垂れるほど吹けば塗料同士が結合しやすいので「ゆるやかな凹凸」になるため、反射がよくなり艶がでます。

どちらにしても、スプレーは霧状の粒粒を飛ばして付ける方式ですので、使用する塗料にもよりますが、吹きつけ技術によって「ザラザラ」なのか、「ゆるやかな凹凸」なのかは変わりますが、 表面の「凹凸」はさけられません、仕様です。

ですので「鏡面仕上げ」などでは、その後に「ペーパーで研磨」、「コンパウンドで磨き」 などを行い塗装表面を「出来るだけ平ら」にします。

ここで「塗料の乾燥について」に少し話しが戻りますが、 ラッカー塗料は乾燥が速く厚く塗ると表面から乾く為、 中の方が乾きにくくなります。

なので基本的には、薄く吹き付けし一度で厚く塗らないようにした方がいいです。ですが、そうする事で当然「艶はまったくでません」。それを「コンパウンド」などの磨き材を使い、磨いて艶を出すのですが、DIYなどでは「磨き作業」などはしない方向が多いので、「最後の仕上げ吹き」に厚く吹いて仕上げをするか、ちょっと割高になりますが、 「2液型ウレタンクリヤー塗料」で仕上げるのがいいかと思います。2液型ウレタン塗料はラッカー塗料などと比べると、ある程度は厚く吹けますし、乾燥後の痩せが少なく艶もいいです。

 吹きつけをする際に艶を出すコツ 

塗料を「パパっと吹けば艶はでませんし、垂れる寸前まで吹けば艶はでます。」 と、よくこのような感じで吹き方のコツを書いているのを見かけますが、慣れない人にこんな事を言っても「無理」ですよね。 「パパッ」は出来るとして、「垂れる寸前まで」というのが無理だと思います。

塗料の種類や粘度によって「垂れる寸前まで」というのは変わります。ですので、その時使う塗料を「垂れるまで吹く」事で、どれくらい吹けば垂れるのか「覚えればいい」のです。

吹きつけ時の手の動かすスピードなどを変えたり、塗装物との距離を変えてみたりして、自分に合うやり方で どれくらいでやれば「塗料が垂れる」のかを理解すれば 垂れるのが怖くて上手く出来ないよりは上手くできると思います。もちろん、「垂れるまで吹く」練習は別の物で練習してみてくださいね。

基本的なスプレーの動かし方

図にしてみましたが、分かりにくいかもしれません。

●最初は「パラ吹き」と言って、パラパラ吹く(下地が見えていいです)事が大事です。最初から塗料を付着させようとすると「垂れ」の原因になります。パラ吹きをすることで以降の塗料がのりやすくなります。(足付けをよくする。とも言います)

●塗装物とスプレーの距離は丁度いい距離があります。近づけて吹く場合は手を動かすスピードを早く、離して吹く場合は手を動かすスピードを遅くする事になります。慣れないうちは塗装物との距離を少しだけ遠めにすると、やり易いかもしれません。

●最初は「角」や「縁」などの塗料が、「のりにくい(付き難い)部分から吹き付けます。

●最初の吹き初めは塗装物の外側から始めます。塗料の吹き始めは粒になって出やすいので、失敗しやすいです。

●端まで吹いたら一旦止め、再度外側から戻るように吹きます。私はあまり「止める」動作は行いませんが、なれない内は行った方がいいかもしれません。

●吹き付けた塗料のパターン(幅)に対して、半分くらい重なるように次の吹きつけを行う。全体を均等になるように吹きつけするためには、コレくらいの感じで重ねながらやります。

●長方形の場合(テーブルとか車の模型とか)は、長い方向や進行方向に吹きつけます。専門用語で「十字を切る」と言うのですが塗装ムラを出さないように「縦、横」ともに塗る方法もありますが、基本は長い方や進行方向に吹きつけます。2回目に塗装する時は逆向きから長い方向や進行方向に吹きつけます。 

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●なるべく噴出し口を「対象物と直角にして、対象物と平行に」が基本ですが、天板などを塗る場合、缶スプレーだと出にくい場合があるので、多少、斜めになってもかまいません、大丈夫です。

●手を動かすスピードも大事ですが、それより大事なのは手を動かすスピードを「なるべく一定に保つ事」です。スピードが一定ではない場合、「ムラ」の原因になります。参考にはならないかもしれませんが、私の場合は吹き付けている塗料(塗膜の肌)を見(確認)ながら塗装しているので、手の動きをあまり意識した事はありません。

●もし、塗料が垂れてしまっても、あわてなくて大丈夫です。充分乾燥させてから、あて木やあてゴム」を使いペーパーで研げばいいです。あわてて拭き取るようなことをすれば、「2次災害」が起こる危険が大きいです。

 ●塗装するまえに缶スプレーを20℃~30℃くらいのお湯で、「湯銭」するとスプレーの内圧があがって、霧が細かくなるそうですが、私はやった事がありませんし、やらなくても綺麗に塗れます。塗る前によく振るといいです。缶スプレーを湯銭するよりも、塗装物を「ドライヤー」などで、軽く人肌程度に暖めると塗料ののりがいいです。

最後に

色々と、缶スプレーに関して書いてみましたが、殆どの缶スプレーは「上塗り」用の塗料なんですね。勿論、下塗り用もありますが塗装の仕上げに関して上塗りをするには、

業務用、DIY用にかかわらず、「下地」がとても大事です。

極端に言えば、下地をきちんと作っていれば、上塗りはなんでも綺麗に塗れるわけです。逆に、どんなに上手いプロでも、下地がダメな場合は綺麗に塗れません。

上塗りをするよりも、下地を作る方が難易度が高くなります。「木」、「鉄」、「プラスチック」、その他色々な対象物があるわけですが、「下地材」の選び方や「キズ」や「隙間」の補修、ペーパーの掛け方など、「下地」を作る方が大事な事だと思っています。

下地に関しても機会があれば書いてみたいと思います。 

缶スプレーを使用した記事など  

paintwork.hatenablog.com 

スプレー缶グリップ」あると便利だそうです。 

私は使用したことはないですが、たしかに便利そうです。 

 

今回はこの辺で。