work48 現場調査 その① 外壁・モルタル壁・トタン壁・塗料の剥がれ浮き
現場調査
先日、外壁が悪くなっているので「診てもらいたい」と依頼され、状況確認をするために工務店の社長と一緒に 依頼者のお宅に伺いました。
状況
築30年は経っているであろうその家の外壁は、「モルタル壁」と「鉄板壁(トタン壁)」で構成されていました。10年以上前に「塗り替え工事」をされており、塗装が剥げている状態を診てもらいたいという事でした。
塗装状態の確認
トタン壁
塗装が剥げたり浮いたりしている箇所です。まずは「鉄板壁(トタン壁)」です。木目がプリントされた鉄板壁の上に塗装していますが、塗料が浮いています。
元々はこんな感じの鉄板壁です。亜鉛メッキ鋼板の上に「木目柄」をプリント(印刷)しています。化粧鉄板、化粧トタンとも言われています。
※トタンについては 「屋根」についてですが過去記事で書いています。 壁と屋根の違いはありますが、基本的には構成や考え方などは同じです。
モルタル外壁
モルタル外壁部分です。塗料の剥げた部分から覗くと、旧塗膜を見てみると最初の塗装は「スキン」のようです。その後の塗装で「下塗りに微弾性フィラー模様塗り・上塗りに溶剤系」を、行っているみたいです。下塗りの「模様塗り」はちゃんとした模様塗りになっておらず、ウールローラーでの「平滑塗り」に近い物になっています。
※モルタル壁の外壁塗装の種類や施工方法などは過去記事で説明しています。
塗装が剥げた原因
上の「鉄板壁(トタン壁)」と「モルタル壁 の現状を確認した所で、それぞれの壁の塗装について 「チェック」 していきたいと思います
トタン壁
トタン壁のチェックをしてみます。 鉄板壁(トタン壁)の浮いた塗料を少し剥いでみました。パリパリ」と簡単に剥げてしまいます。下地の「亜鉛メッキ部」には錆などは出ていませんが、下地(木目のプリント)」ごと剥げます。
剥いだ塗膜の裏には、元々の化粧であった「木目のプリント」が付いています。剥げた塗膜を確認すると、上塗りと木目色の間に「白い塗膜」が確認できましたので、なんらかの「下塗り材もしくは錆止め塗料」を塗っていたみたいです。
つまりこの状態は、現状の塗装が悪いわけではなく、下塗り材が下地の木目のプリントにきちんと密着していた事と、元々の「亜鉛メッキ部」と「木目のプリント」との密着が弱くなった為に下地(木目プリント)から剥がれて(浮いて)しまったと言えます。
対策案
対策と致しましては、
①「塗装(塗膜)」を全部、「剥ぎ落とし」再塗装する。
② 鉄板部「全ての壁」を、「新しい鉄板を上から貼り」塗装はしない。
③ 浮いた部分だけを剥ぎ落とし、再塗装する。
の何れかになるかと思います。
①「塗装(塗膜)」を全部、「剥ぎ落とし」再塗装する。の場合は、塗装費用よりもケレン作業(塗膜の剥ぎ落とし)に費用が掛かってしまいます。塗膜が浮いている箇所は直ぐに剥げますが、浮いていない箇所は非常に密着しているので剥ぎ落とすのにとても手間が掛かります。
② 鉄板部「全ての壁」を、「新しい鉄板を上から貼り」塗装はしない。の場合は、全体に新しい鉄板を上から貼るわけですから、塗装の必要はありません。
③ 浮いた部分だけを剥ぎ落とし、再塗装する。の場合は、塗料の浮いた部分を剥ぎ落とし、露出した亜鉛メッキ部に下塗りを施し、部分的にキリのいい範囲を塗ると言う事です。応急処置的な意味合いを持ちます。露出した亜鉛メッキ部と塗装部には「段違い」が出来ますが、亜鉛メッキの上に「パテ処理」などをしても意味はなく、短い期間で「パテ」が鉄板から剥げてしまったり、パテの「痩せ」がでてしまいます。したがって、段違いが出来てしまうので、「見た目はよくない」です。また、将来別の部分が剥げてくる確率も非常に高いので、①~③の処置をするまでの「応急処置」としての意味合いが強いですが、費用は一番安く出来ます。
検討
色々な意味で予算を掛けたくない場合は ③ を選択し、塗料の浮きや剥がれが新しく出た場合は、その都度 ③ で対応する。しかしその場合は見た目があまりよくはありません。
問題は、
①(全て剥いで塗装)か②(新しく鉄板を貼る)での選択になるかと思います。
①だとケレン作業の手間が掛かりますので、普通の塗装よりも費用が掛かります。②だと鉄板を新しく貼るので費用は掛かるかもしれませんが、①と②が同じくらいの費用、もしくは②が少し高いくらいの場合は、②を選んだほうがいいと思います。
新品の鉄板なら、以降10年くらいは塗装をしなくても済むからですが、それらを考慮した場合でも塗装費の方が安い場合は塗装でもよいかと思います。
相談としては、「浮きや剥げ」などが出ている部分の範囲だけ「範囲を決めて範囲内だけ全て剥ぎ落とし」、大丈夫な箇所に関しては適度なケレン作業だけで塗装工事を進める事も出来ます。
モルタル壁
次にモルタル壁に関してですが、「スキン壁」でこのような「浮きや剥げ」が出てきた時は、結構やっかいなんですね。剥げている原因そのものはとっても単純で、下地(スキン)と、現塗膜が密着していないということなんですが、スキンは砂状や石状の塗料なので、固めてある樹脂(接着材みたいな物)が劣化するとボロボロはげて来るのが特徴なんですね。
ですのでスキンの上に塗装する時は、「必ず」シーラーをキチンと塗り、砂や石を固めてやる必要があるわけです。スキン自体が固められていなく、ボロボロと剥げてくる状態になれば、その上に塗っている塗料が浮いてくるのも当然だと言えます。
ですので、「今」剥げたり浮いたりした箇所を直しても、将来他の場所でも同じような事が起こる可能性が非常に高いのですね。つまりこのような状態を「完全に処置」するには、現状の塗膜を全て撤去する必要があると言う事なのです。しかし、口でいうのは簡単ですが、外壁の塗装を「全て撤去する」のは不可能に近いです。
ですので、現状剥げていなくても、打診検査などで塗膜の浮きなどを確認し、剥ぎ落とせるだけは全て剥いで、補修材などで補修し、再塗装などをするのが一般的かと思います。
下の写真の様に出来るだけ剥ぎ落としはやりますが、「完全に」剥ぎ落とすのは難しいですね。また、電動工具などで(サンダーなど)で剥ぎ落とし作業を行うと、工具の振動でモルタル壁を傷める(ヒビが入ったり)事に繋がるので、住宅(モルタル壁など)の剥ぎ落としは手作業でやるのが正しいやり方です。
違うお宅の画像ですが、悪い塗膜の剥ぎ落としを手作業で行っている時の写真です。
塗料の浮きや剥がれについて、補修塗装の事を書いた記事です。 paintwork.hatenablog.com
今回はこのへんで。